プロフィール

アマチュアというのは、社会のなかで思考し憂慮する人間のことである。

- アマチュアリズムとは、文字通りの意味をいえば、利益とか利害に、もしくは狭量な専門的観点にしばられることなく、憂慮とか愛着によって動機づけられる活動のことである。 現代の知識人は、アマチュアたるべきである。アマチュアというのは、社会のなかで…

考えること、愛することは、パスカルによれば、人間の本性である。

- 「人間は考えるために生まれておる」(III,119)。−−「我々がただ愛するためにこの世にあることを誰が疑うであろうか」(III,123)。考えること、愛することは、パスカルによれば、人間の本性である。この本性に応じて生きることは幸福を作ることに他な…

隣り人を自分自身のように愛せよということは、すべての人を同じように愛せよという意味ではない。

- 隣り人を自分自身のように愛せよということは、すべての人を同じように愛せよという意味ではない。なぜなら、わたしも自分自身の存在のありようを全部が全部同じように愛しているわけではないからだ。また、すべての人を決して苦しませてはいけないという…

「善良であること」「親切であること」を人は笑うでしょうが、

- 自己を気遣うよりさきに他の誰かを気遣うこと、他の誰かを見守ること、自己の責任を引き受けるよりさきに他の誰かの責任を引き受けること、こういうった行いのうちにはたしかに聖性が認められます。人間性とはこの聖性の可能性のことです。この守護のスロ…

知慮(フロネーシス)というものに関して

- 知慮(フロネーシス)というものに関しては、こんなふうにして、つまり、いったいいかなるひとびとをわれわれは「知慮あるひと」と読んでいるかということを考えることによって、その何たるかの把握が可能になるであろう。「知慮あるひと」(フロニモス)…

みずから心を正しくしてこれらの害悪を対治する工夫を怠ることのないように

- 人類の上に重くのしかかって、改善の見込みのない(ように思われる)もろもろの害悪をつらつら思いみるとき、思慮ある人は、道義の穎廃ををすら招き兼ねないような苦悩を感じる、しかも無思慮な人は、これを夢にだに知らないのである。その苦悩とは−−世界…

朝のこの上なく明るい眼差しで、輝いている優しい若者よ

- 朝のこの上なく明るい眼差しで、輝いている優しい若者よそのためにこそ出発せよ若者たちよあなたたちの年齢にふさわしい情熱を燃やして出発せよ強く雄々しくこんなにも美しい戦いのために。二つの偉大な美徳、『忍耐』と『勇気』とによって、 すべてのもの…

知恵を愛し、知恵の命ずるところによって生きること

- 南方は、鴨長明を「十二世紀の日本のソロー」と呼んだ。わたしは南方熊楠を、二十世紀の日本のソロー(Henry David Thoreau, 1817−1862)とよびたい。ソローは、わたしがもっとも尊敬する十九世紀アメリカの思想家である。知識の量においては、南方はソロー…

「僕みたいに白人で男で中産階級のアメリカ人学生は何も言う資格がないんじゃないでしょうか」とぼやくだけでなく

- 現在ニューヨークのコロンビア大学で教鞭をとるガヤトリ・スピヴァクは、その難解な文章もさることながら、教室でもきびしい姿勢で有名である。あるとき大学の教室で、ひとりの学生が「先生の言われるように、自分の出自を自覚したり、自分がどんな特権的…

自分は旗印として平民主義を掲げるのではなく、平民主義を生きるのだ。頓智と諧謔で人間の平等を主張するのだ。

- 外骨も蘇峰のこの「平民主義」に強く共感している。「国民之友」が創刊された時に、すぐに買い求めてこれを貪るように読んだ。明治新政府ができて「四民平等」を唱えながらも、かつての「士農工商」の四つの階級は「皇族・華族・士族・平民」と形を変えて…

夏に 汝ら額に汗して

- 三九 夏に 汝ら額に汗して おのれのパンを食うべし、とか? かしこい医者の診断(みたて)では、 汗した際には何も食わないがよいという。 天狼星が目くばせする、何が不足と告げるのか? あの烈しい目くばせは何を求めているのやら? 汝ら額に汗して おの…

「学問とは何ですか」「それは知る喜びである」

- 学問そのものへの問いのなかで、とりわけ矢面に立たされた教科が一般教育でありました。教養を重視した新制大学の理念として各大学に設置された一般教養でしたが、高校の科目の単なる延長とみられたり、専門科目との関係づけの不十分さが表面化しました。 …

「総体的」態度が必要になるのは、生活における互いに衝突するさまざまの関心を行動において統合することが必要であるから

- 哲学を思考と関係づけることは、哲学を知識から区別するのに役立つ。知識、根拠づけられた知識は科学である。それは、合理的に解決され、整理され、処理された事物を表示する。他方、思考は未来に関連している。それは不安定状態によって引き起こされ、動…

個々の人間、個々の民族の特性をそのまま認めながらも、真に誉むべきものは全人類に属することによってこそきわだつ

- 個々の人間、個々の民族の特性をそのまま認めながらも、真に誉むべきものは全人類に属することによってこそきわだつのだという確信を失わぬようにしてこそ、真に普遍的な寛容の精神が最も確実に得られる。 −−ゲーテ「文学論・芸術論」『世界の名著38 ヘル…

否定的自由のもたらす破壊の凶暴

- 否定的自由にとっては、あらゆる特殊化と客観的規定を絶滅することからこそ自由の自己意識が生じる。そこで、否定的な自由が欲すると思っているものはそれ自身すでに抽象的な表象でしかありえず、これの現実化は破壊の凶暴でしかありえないのである。 −−へ…

理性によって導かれる人間の究極の目的、いいかえれば最高の欲望は−−彼はこの欲望にもとづいて、それ以外のあらゆる欲望を統御しようとする−−こと

- かくて人生でもっとも有益なものは、知性あるいは理性をできるだけ完成させることである。そしてこの点にのみ人間の最高の幸福あるいは至福がある。もちろん至福は、神の直観的な認識から生じる心の安らぎ以外の何ものでもない。他方、知性を完成させると…

言語活動は立法権であり、言語はそれに由来する法典である。われわれは、言語のうちにある権力に気づかない。

- 私が権力的言説と呼ぶのは、言説を受け取る側の人間に誤ちがあるとし、したがって、罪があるとするような言説のすべてである。ある人々は、われわれ知識人があらゆる機会に「国家権力」に反対して行動することを期待している。しかし、われわれの真の戦い…

「隔たり」を認めながらも「人間性の一なること」を信じる

- 私事にわたるけれど『タルムード新五講話』の訳書を送ったおりに、翻訳の作業そのものが私に自己省察の得難い機会を提供してくれたことに感謝の意を表したことがある。その手紙への返信のなかでレヴィナスはこう書いてくれた。 「あなたが克服しなければな…

哲学を学ぶ「私たち蝶々は非常に不確定で、大地の上に安全にすわって満足している人びとから見るとおそらくたいへん滑稽」ですがそこに学ぶ意義が存在する。

- 哲学的な生活態度の目標は、到達可能な、したがってまた完成されるような状態として定形的に表現されないものであります。私たちの状態は私たちの実存のたえざる努力やその断念の現象であるにすぎないのです。私たちの本質は「途上にあること」なのです。…

私のことを薄情者だとか「お前は人間じゃねぇ!!!」と罵声りつけてくださっても結構です

市井の職場に勤める方のお父さんが亡くなりました。 その都合で……忌引きで休みになりますので、休まれるところのフォロー……、大学の出勤日とのかねあいもあり、ひさしぶりに2週間連続仕事ちゅうという状況です。お父さんが亡くなれたことには、哀悼の意を抱…

一般教養教育をうけた者とは、安直で好まれやすい解答に抵抗できる者のことである

- 一般教養教育とは、正確にいって、学生を助けてこの問い(=「高貴な熱望にかかわる問い、『人間とは何か』という最大の問題のこと……引用者註)を自分で立てられるようにすることを意味する。答えは明らかではないが、かといって見いだせないわけでもない…

よい精神をもつというだけでは十分ではないのであって、たいせつなことは精神をよく用いること

- 良識はこの世で最も公平に配分されているものである。というのは、だれもかれもそれを十分に与えられていると思っていて、ほかのすべてのことでは満足させることのはなはだむずかしい人人でさえも、良識については、自分がもっている以上を望まぬのがつね…

新入学生に心掛けて欲しい3つのポイント(よき友、よき本、そしてほんものにふれること)

- 学而第一 子曰。学而時習之。不亦説乎。有朋自遠方来。不亦楽乎。人不知。而不慍。不亦君子乎。 子曰く、学んで時に之を習う。亦た悦ばしからずや。朋あり、遠方より来る。亦た楽しからずや。人知らずして慍(いきど)おらず。亦た君子ならずや。 −−宮崎市…

およそ人間の思考というものは、その最上のものでさえ、機械的になろうとする傾向、つまり内容を公式的な言葉で表現しようとする傾向を持っている

- 四月二十二日 およそ人間の思考というものは、その最上のものでさえ、機械的になろうとする傾向、つまり内容を公式的な言葉で表現しようとする傾向を持っている。このような公式的な表現は、たえず骨のおれる思考活動をなす代役をつとめ、少なくとも、あと…

「ひととの出会い」に感謝

- どこの国だってほんとうの善人は多くない、はなはだ少ない。美しい人も多くはない、はなはだ少ない。しかしいないことはない。ただそういう人にめったに会うことができないだけだ。 −−武者小路実篤『友情』岩波文庫、年、20頁。 - 卒業式の折り、謝恩会に…

宙宇は絶えずわれらによつて変化する

- 宙宇は絶えずわれらによつて変化する 誰が誰よりどうだとか 誰の仕事がどうしたとか そんなことを言ってゐるひまがあるか −−宮沢賢治「生徒諸君に寄せる」、谷川徹三編『宮沢賢治詩集』岩波文庫、1979年、269頁。 - このたびはご卒業おめでとうございます…

人間は……自分の創り出すものを越えて成長し、自分の考えの段階を踏みのぼり、自分のなしとげたもののかなたに立ちあらわれる

- 人間は、この宇宙における、有機物、無機物を問わず、ほかのどんなものとも違って、自分の創り出すものを越えて成長し、自分の考えの段階を踏みのぼり、自分のなしとげたもののかなたに立ちあらわれるものだ。 −−スタインベック(大橋健三郎訳)『怒りのぶ…

語りをつうじて顔が私とのあいだに関係をとりむすぶとしても、顔はそのことで〈同〉のうちに組みいれられるわけではない

- 語りをつうじて顔が私とのあいだに関係をとりむすぶとしても、顔はそのことで〈同〉のうちに組みいれられるわけではない。顔は関係のなかにありながら、絶対的なものでありつづける。〈同〉のうちに囚われていることを意識が疑いつづける、独我論の弁証法…

「なんの……いまとなっては、おもしろかったわえ」

- 苦笑と共に、信之が、 「われらに面倒が見きれぬことよ」 「御苦労を、おかけいたしまいた」 しみじみと、右近がいった。 「なんの……いまとなっては、おもしろかったわえ」 事もなげに、一当斎信之が、 「大名のつとめと申すは、領民と家来の幸せを願うこ…

日本で最も頻繁に使われる「しかたがない」という政治的な言葉を、あなたの辞書から追放すること

- ……個人はすべて、少しだけなら自分の環境を変えることができる−−この点は、誰もが認めると思う。みなさんにも、そのような経験が少なくとも数回はあるはずだ。そこからもう一歩進んで認識すべきなのは、とても小さな努力の積み重ねが突如として大きな結果…