近代とは何か

覚え書:「今週の本棚:荒川洋治・評 『ドクトル・ジヴァゴ』=ボリース・パステルナーク著」、『毎日新聞』2013年04月28日(日)付。

- 今週の本棚:荒川洋治・評 『ドクトル・ジヴァゴ』=ボリース・パステルナーク著 毎日新聞 2013年04月28日 東京朝刊 (未知谷・8400円) ◇すべての運命がきらめく、変革の古典 二〇世紀現代文学の古典「ドクトル・ジヴァゴ」(一九五五)はソ連での発表…

覚え書:「書評:鉄条網の歴史―自然・人間・戦争を変貌させた負の大発明 [著]石弘之、石紀美子 [評者]荒俣宏(作家)」、『朝日新聞』2013年04月14日(日)付。

- 鉄条網の歴史―自然・人間・戦争を変貌させた負の大発明 [著]石弘之、石紀美子 [評者]荒俣宏(作家) [掲載]2013年04月14日 [ジャンル]歴史 ■家畜用から新たな環境の囲いへ 鉄条網は西部劇を終わらせた。その発明者グリッデンが後妻に「花壇が家畜に荒らされ…

書評:新井政美編著『イスラムと近代化 共和国トルコの苦闘』講談社、2013年。

新井政美編著『イスラムと近代化 共和国トルコの苦闘』講談社、読了。イスラムは「反近代的」か。イスラムと近代的価値観の対立・調和の実験場=トルコの近現代史を材料に、本書は、共和国トルコの「苦悶」の歩みから「近代化」「政教分離」「世俗化」の内在…

書評:小倉紀蔵『朱子学化する日本近代』藤原書店、2012年。

小倉紀蔵『朱子学化する日本近代』藤原書店、読了。儒教社会から脱皮(西洋化)することが近代日本の歩みであるとの通説を打破するのが本書の狙い。著者によれば「日本の近代化は半儒教的な徳川体制を脱皮し、社会を『再儒教化』する過程」であり、福沢諭吉…

覚え書:「書評:色川大吉歴史論集 近代の光と闇 [著]色川大吉 [評者]上丸洋一」、『朝日新聞』2013年03月03日(日)付。

- 色川大吉歴史論集 近代の光と闇 [著]色川大吉 [評者]上丸洋一(本社編集委員) [掲載]2013年03月03日著者:色川大吉 出版社:日本経済評論社■「歴史の辛さ」ともにかみしめ 天皇制の是非について2人の歴史学者が対談した。 A「これは憲法にあきらかなよう…

覚え書:「時代の風:宗教と民主主義=仏経済学者・思想家、ジャック・アタリ」、『毎日新聞』2013年03月03日(日)付。

- 時代の風:宗教と民主主義=仏経済学者・思想家、ジャック・アタリ 毎日新聞 2013年03月03日 東京朝刊 ◇過激主義を恐れるな 西アフリカのマリで、イスラム過激派勢力の拡大に対しフランス軍などが軍事介入した。マリで起きていることは私たちが直面する多く…

ちがっているということと反対であるということがたえず混同される

- 日本ではちがっているということと反対であるということがたえず混同されるでしょう。たとえばノン・コミュニストという範疇がなくて、同伴者か然らずんば反共というふうに区別する。これが組織論に現われると丸抱え主義になり、既存のものとちがった組織…

覚え書:「引用句辞典 不朽版 『真の人生』の逆説=鹿島茂」、『毎日新聞』2013年02月27日(水)付。

- 引用句辞典 不朽版 「真の人生の逆説」 鹿島茂幼年時代を全肯定し一億総シュルレアリスト シュルレアリスムにのめりこむ精神は、自分の幼年時代の最良の部分を、昂揚とともにふたたび生きる。(中略)幼年時代やその他あれこれの思い出からは、どこか買い…

覚え書:「今週の本棚:松原隆一郎・評 『残すべき建築』=松隈洋・著」、『毎日新聞』2013年02月24日(日)付。

- 今週の本棚:松原隆一郎・評 『残すべき建築』=松隈洋・著 毎日新聞 2013年02月24日 東京朝刊 (誠文堂新光社・1890円) ◇モダニズムの“初心”から解体の無頓着に抗する 日常の生活で出会う、ちょっとした風景に愛着を覚えることは、誰もが経験している…

覚え書:「今週の本棚:持田叙子・評 『冥府の建築家−ジルベール・クラヴェル伝』=田中純・著」、『毎日新聞』2013年02月24日(日)付。

- 今週の本棚:持田叙子・評 『冥府の建築家−ジルベール・クラヴェル伝』=田中純・著 毎日新聞 2013年02月24日 東京朝刊 ◇持田叙子(のぶこ)評 (みすず書房・5250円) ◇「骸」をひきずり「不死」の建築をのこした男の生涯 これは、生れつき重い宿痾(…

覚え書:「今週の本棚:富山太佳夫・評 『アンチモダン−反近代の精神史』=A・コンパニョン著」、『毎日新聞』2013年02月17日(日)付。

- 今週の本棚:富山太佳夫・評 『アンチモダン−反近代の精神史』=A・コンパニョン著毎日新聞 2013年02月17日 東京朝刊 (名古屋大学出版会・6615円) ◇“近代と反近代”複雑きわまりない関係に迫る 本を読むことの楽しみは、他の人が読まない本を読むこと…

覚え書:「【書評】それでもわが家から逝きたい 沖藤典子著」、『東京新聞』2013年02月03日(日)付。

- 【書評】それでもわが家から逝きたい 沖藤典子著◆介護する家族見守る [評者]森 清 労働問題研究家。著書『働くって何だ』『大拙と幾多郎』など。 人はどこでどう逝くか、実際には本人も近親者も分からない。「わが家で自然に」が大方の願望。七十九歳、…

書評:藤原辰史『稲の大東亜共栄圏 帝国日本の〈緑の革命〉』吉川弘文館、2012年。

藤原辰史『稲の大東亜共栄圏 帝国日本の〈緑の革命〉』吉川弘文館、読了。本書は帝国日本の「コメの品種改良の歴史にひそむ、『科学的征服』の野望」を明らかにする一冊。品種改良に取り組んだ農学者の軌跡は、「生態学的帝国主義」の歴史である。緑の革命は…

覚え書:「フランクル『夜と霧』への旅 [著]河原理子 [評者]後藤正治」、『朝日新聞』2013年01月27日(日)付。

- フランクル『夜と霧』への旅 [著]河原理子 [評者]後藤正治(ノンフィクション作家) [掲載]2013年01月27日■豊かな時代にも「人生の意味」求め いわゆる“この一冊″に、ヴィクトール・E・フランクルの『夜と霧』(原題は「一心理学者の強制収容所体験」)をあ…

覚え書:「今週の本棚:伊東光晴・評 『大正という時代』=毎日新聞社・編」、『毎日新聞』2013年01月27日(日)付。

- 今週の本棚:伊東光晴・評 『大正という時代』=毎日新聞社・編 (毎日新聞社・2520円) ◇不穏な日々“やわらかな社会”に憧れた人々 昭和のはじめに生まれ、戦時中に小中学校時代、戦後に大学教育を受けた私には、「大正」という時代は、父や中学の教師…

書評:ニーアル・ファーガソン(仙名紀訳)『文明 西洋が覇権をとれた6つの真因』勁草書房、2012年。

- 「いったいどのようにして……ヨーロッパはこれほど強大になり得たのだろうか。ヨーロッパ人は交易や征服のためにアジアやアフリカをたやすく訪れることができるのに、アジア人やアフリカ人がなぜヨーロッパの沿岸や港湾を侵略して植民地を築けないのだろう…

書評:サルヴァトーレ・セッティス(石井朗訳)『“古典的なるもの”の未来―明日の世界の形を描くために』ありな書房、2012年。

サルヴァトーレ・セッティス(石井朗訳)『“古典的なるもの”の未来―明日の世界の形を描くために』ありな書房、2012年。古代から現代へ至るヨーロッパ精神史を“classical”を切り口にしながら、その本質といってよい「ヨーロッパとは何か」を浮き彫りにする好…

人類を愛するなんてね……、そんなことはできないですよ。隣のオッサンだって愛せないことがあるのに(笑)

- 加藤 これは『夕陽妄語』に書いたこともあるし(「近うて遠きもの・遠きて近きもの」、『朝日新聞』一九九九年一〇月二〇日付夕刊)、書かなかったこともあるんですが、核エネルギー、原子力の問題は「戦争」か「平和」か、という単純な図式に当てはまらな…

覚え書:「今週の本棚:近代を創ったスコットランド人=アーサー・ハーマン著」、『毎日新聞』2012年12月2日(日)付。

- 今週の本棚:近代を創ったスコットランド人=アーサー・ハーマン著 (昭和堂・5040円) 近代における人間や社会や世界に対する新しい認識を切り開いた18世紀の啓蒙思想。フランスほど華やかではないが、スコットランドでは活発で独創的な思想が花開き…

ポスト・モダンか、モダンなポストかよく存じませんけど、五年や十年そこらでコロコロ変わってたまりますか。

- 世界はどこまでも戯れであって決定不能であるなどということは、真剣に考えるほどニーチェも狂う恐ろしい事態であるのに、「戯れ」というその言葉だけが妙に口当たりが良くって、それであれらの戯れの知識人たちは、折しもバブル期、世間と戯れて回ってい…

La Pensée sauvage:植民地支配は文明化なんだから感謝しろってドヤ顔に涙

- さて、わが主題に話を戻すとして、自分の習慣にはないものを、野蛮と呼ぶならば別だけれど、わたしが聞いたところでは、新大陸の住民たちには、野蛮で、未開なところはなにもないように思う。どうも本当のところ、われわれは、自分たちが住んでいる国での…

書評:藤井省三『魯迅 −−東アジアを生きる文学』岩波新書、2011年。

- 竹内好はこのような“哥”と“哥児”とを区別することなく、旧訳版でも改訳版でも「閏(ルン)ちゃん」「迅(シュン)ちゃん」と訳している。これはたとえば農地改革で地主制度が消滅し、身分差が縮小した戦後日本社会に合わせて魯迅文学を土着化したものであ…

覚え書:「今週の本棚:若島正・評 『モラヴァジーヌの冒険』=ブレーズ・サンドラール著」、『毎日新聞』2012年07月29日(日)付。

- 今週の本棚:若島正・評 『モラヴァジーヌの冒険』=ブレーズ・サンドラール著 (河出書房新社・2940円) ◇世界に破滅をもたらす“狂人”の物語 世の中にあまたある小説で、いちばん好きな題名を挙げろと言われたら、わたしは躊躇(ちゅうちょ)せずに『…

自立・自律の思索と参加を根こぎにする「ウチとソト」という曖昧さと退行、「滅私奉公」と「マイホーム主義」の併存という撤退の問題。

- 丸山 東洋対西洋とか、日本対外国という発想はわたしはきらいです。とくに、何かというと、日本ではこうだけれど、「外国では」こうだという言いかたがはやるのは、日本の空間的地位と文化接触の昔からかたちとに制約されている、それこそ日本的な発想です…

覚え書:「今週の本棚:村上陽一郎・評 『近代のまなざし 写真・指紋法・知能テストの発明』=山下恒男・著」、『毎日新聞』2012年04月15日(日)付。

- 今週の本棚:村上陽一郎・評 『近代のまなざし 写真・指紋法・知能テストの発明』=山下恒男・著 (現代書館・2730円) ◇欧米に現れた「人間を計る科学的手法」の功罪 特異な観点を備えた書物である。標題は「近代のまなざし」とあるが、まなざしの赴く…