アジア

書評:J・スコット(佐藤仁監修、ほか翻訳)『ゾミア 脱国家の世界史』みすず書房、2013年。

J・スコット『ゾミア 脱国家の世界史』みすず書房、読了。ゾミア(大陸部東南アジア山岳地帯)の歩みとは文明から切り離された未開社会なのか。国家主義的ナラティブは山地民を野蛮と断ずるが、著者はNo。ゾミアこそ「脱国家」の共同体である。 山地民の…

書評:ヴィジャイ・プラシャド(粟飯原文子訳)『褐色の世界史 第三世界とはなにか』水声社、2013年。

ヴィジャイ・プラシャド『褐色の世界史 第三世界とはなにか』水声社。第三世界とは地理的・歴史的に限定された場所ではない。帝国主義と植民地主義に規定される現代を超克する思想運動という著者は位置づける。トータルな支配とその暴力に対峙する運動だから…

覚え書:「今週の本棚:湯川豊・評 『真珠湾収容所の捕虜たち』=オーテス・ケーリ著」、『毎日新聞』2013年07月28日(日)付。

- 今週の本棚:湯川豊・評 『真珠湾収容所の捕虜たち』=オーテス・ケーリ著 毎日新聞 2013年07月28日 東京朝刊 (ちくま学芸文庫・1470円) ◇米情報将校が捉えた“捕虜である友人”の群像 一九四二年に米海軍日本語学校に入学、一年後、海軍少尉としてハワ…

書評:倉沢愛子『資源の戦争 −−「大東亜共栄圏」の人流・物流』岩波書店、2012年。

- 日本軍の東南アジア占領の最大の目的は燃料、食料、鉄鉱石など戦争継続に必要な「重要国防資源」の獲得にあったことは、本書のなかで再三強調してきた。獲得したものは、現地自活のほかに、「大東亜共栄圏」内の物流に回すこと、日本へ搬送することが重要…

書評:飯倉章『黄禍論と日本人 欧米は何を嘲笑し、恐れたのか』中公新書、2013年。

- 他に西洋列強諸国が勝利の要因として注目したのは、日本の愛国主義である。そのお様子を如実に示しているのが『パンチ』に載った「愛国心のレッスン」〔図6−19〕だ。日本の軍事的成功に、ジョンブルが「あなたの軍制度はみごとに機能しているように思われ…

覚え書:「今週の本棚:インド 姿を消す娘たちを探して=ギーター・アラヴァムダン・著」、『毎日新聞』2013年03月17日(日)付。

- 今週の本棚:インド 姿を消す娘たちを探して ギーター・アラヴァムダン・著 (つげ書房新社・2310円) インドのカーラム元大統領が「まえがき」を書いている。女性は「神からの贈物」であり、本書は「私たちの良心を目覚めさせてくれます」と。この本…

覚え書:「異論反論 安倍首相が沖縄を訪問しました=佐藤優」、『毎日新聞』2013年02月20日(水)付。

- 異論反論 安倍首相が沖縄を訪問しました 寄稿 佐藤優「沖縄の主権」直ちに認めよ 2日、安倍晋三首相が日帰りで沖縄を訪問し、仲井真弘多県知事と会談した。報道から判断すると、MV22オスプレイの沖縄配備強行問題、米開閉隊普天間飛行場の辺野古(同…

覚え書:「みんなの広場 軍隊で受けた恐怖の体罰体験」、『毎日新聞』2013年02月18日(月)付。

- みんなの広場 軍隊で受けた恐怖の体罰体験 無職 86(山口県光市) 連日のように体罰に関連する話題がマスメディアで取り上げられている。大阪市立桜宮高校バスケットボール部主将の男子生徒が顧問の体罰を受けた後に自殺したことが燎原の火のように全国…

覚え書:「異論反論 戦争を子供たちに伝えるのは困難です=城戸久枝」、『毎日新聞』2013年02月13日(水)付。

- 異論反論 戦争を子供たちに伝えるのは困難です 寄稿 城戸久枝当事者の声を聞かせたい この数年間、「戦争や中国残留孤児のことを伝えるために私に何ができるのか」をテーマに据えて活動してきた。講演などで家族の歴史を知るようにすすめると、「家族と向…

覚え書:「今週の本棚:アウンサンスーチー 愛と使命=ピーター・ポパム・著」、『毎日新聞』2013年02月10日(日)付。

- 今週の本棚:アウンサンスーチー 愛と使命 ピーター・ポパム著(明石書店・3990円) スーチーさんは今年六月十九日に六八歳になる。生涯の三分の一近くの自宅軟禁などで自由を奪われながら、ビルマ民主化の象徴的リーダーとしてようやく国際舞台にも登…

書評:藤原辰史『稲の大東亜共栄圏 帝国日本の〈緑の革命〉』吉川弘文館、2012年。

藤原辰史『稲の大東亜共栄圏 帝国日本の〈緑の革命〉』吉川弘文館、読了。本書は帝国日本の「コメの品種改良の歴史にひそむ、『科学的征服』の野望」を明らかにする一冊。品種改良に取り組んだ農学者の軌跡は、「生態学的帝国主義」の歴史である。緑の革命は…

覚え書:「書評:『アホウドリと「帝国」日本の拡大』 平岡昭利著」、『読売新聞』2013年01月13日(日)付。

- 書評:『アホウドリと「帝国」日本の拡大』 平岡昭利著 評・星野博美(ノンフィクション作家・写真家) 明石書店 6000円 羽毛目当ての南進 南洋の絶海を優雅に舞う姿から、昔は信天翁、沖の太夫などと呼ばれた巨大な鳥、アホウドリ。 阿呆鳥、馬鹿鳥な…

覚え書:「今週の本棚:加藤陽子・評 『蒋介石の外交戦略と日中戦争』=家近亮子・著」、『毎日新聞』2013年01月20日(日)付。

- 今週の本棚:加藤陽子・評 『蒋介石の外交戦略と日中戦争』=家近亮子・著 (岩波書店・2940円) ◇酷薄な歴史に堪えた「危機の指導者」像 70代半ばより年長の読者のなかで、満州からの引揚げ体験のある方、あるいは近親者から体験を聞いたことのある…

覚え書:「韓国詩人・尹東柱の足跡解明へ 代表作舞台は高田馬場?」、『東京新聞』2013年01月15日(火)付、夕刊。

- 韓国詩人・尹東柱の足跡解明へ 代表作舞台は高田馬場?戦時下・朝鮮語で詩作、逮捕 韓国の国民的詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ 一九一七〜四五年)が、戦時下の日本で詩作した東京都内の下宿場所は、新宿区高田馬場とみられることが、民間研究者の調査で分…

書評:柴原三貴子『ムスリムの女たちのインド 増補版』木犀社、2012年。

- 幼いころ両親を亡くし親戚の家で育った夫と結婚したチャビーラおばさんは、舅や姑との関係に苦労しなかった代わりに、夫が親から受け継ぐ農地も住む家もなかった。マクドゥミアを家に建てるだけの小さな土地を買い、ボンベイで働く夫の帰りを待ちながら、…

覚え書:「書評:戦後沖縄と米軍基地―「受容」と「拒絶」のはざまで [著]平良好利 [評者]中島岳志」、『朝日新聞』2013年01月06日(日)付。

- 戦後沖縄と米軍基地―「受容」と「拒絶」のはざまで [著]平良好利 [評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史) ■固定化を進めた奇妙な連携 沖縄の米軍基地問題には、多様な主体が絡まる。立場の異なる住民、沖縄の政治リーダー、日本…

覚え書:「今週の本棚:富山太佳夫・評 『完訳 日本奥地紀行 1〜3』=イザベラ・バード著」、『毎日新聞』2012年12月23日(日)付。

- 今週の本棚:富山太佳夫・評 『完訳 日本奥地紀行 1〜3』=イザベラ・バード著 (平凡社東洋文庫・3150?3360円) ◇英国女性が見た明治の地方文化史 年末から年の初めにかけての温泉旅行というのも悪くはないにしても、さしあたり今年は無理。その…

覚え書:「今週の本棚:『「移民列島」ニッポン』=藤巻秀樹著」、『毎日新聞』2012年12月23日(日)付。

- 今週の本棚:『「移民列島」ニッポン』=藤巻秀樹著 他文化共生社会に生きる (藤原書店・3150円) 日本に住む「移民」と正面から向き合ったルポルタージュである。「日本にホントに移民がいるのか」とぶかる向きに、彼らの苦悩や喜びの肉声を伝え、そ…

覚え書:「みんなの広場 語り継ごう満蒙開拓団の悲劇」、『毎日新聞』2012年12月07日(金)付。

- みんなの広場 語り継ごう満蒙開拓団の悲劇 会社員 58(福岡県嘉麻市) 先日の余録に「東京満蒙開拓団」(ゆまに書房)の書名を見つけた時は驚いた。先日読み終えたばかりの本が紹介されていたからである。 私の両親は旧満州(現中国東北部)からの引き揚げ…

書評:平野伸人編『本島等の思想 原爆・戦争・ヒューマニズム』長崎新聞社、2012年。

1988年12月、「昭和天皇に戦争責任はあると思います」と発言し、右翼に銃撃された元長崎市長・本島等さん。本書は本島氏の代表的な論説や講演を収録した思想集大成である。 本島氏の言動は過激と評される向きもあるが、それは同調社会に一石を投じる魂…

覚え書:「今週の本棚:五百旗頭真・評 『中国共産党の支配と権力』=鈴木隆・著」、『毎日新聞』2012年12月02日(日)付。

- 今週の本棚:五百旗頭真・評 『中国共産党の支配と権力』=鈴木隆・著 ◇五百旗頭(いおきべ)真・評 (慶應義塾大学出版会・7140円) ◇冷静に「中国民主化」の可能性をさぐる ああ中国、なんという国か。人治が法の支配に優先する。とりわけトップの権…

覚え書:「今週の本棚:白石隆・評 『中国人民解放軍の内幕』=富坂聰・著」、『毎日新聞』2012年12月02日(日)付。

- 今週の本棚:白石隆・評 『中国人民解放軍の内幕』=富坂聰・著 (文春新書・819円) ◇意思決定や戦略、進化の方向性を多面的に 中国の国防費はすでに20年以上にわたって2桁の伸びを続け、2012年には6700億元(約8・7兆円)を超えた。日本…

覚え書:「今週の本棚:山崎正和・評 『中国は東アジアをどう変えるか』=白石隆、ハウ・カロライン著」、『毎日新聞』2012年11月11日(日)付。

- 今週の本棚:山崎正和・評 『中国は東アジアをどう変えるか』=白石隆、ハウ・カロライン著 (中公新書・882円) ◇言語的変化が「新民族」を生み出す 現代の中国は世界最多の人口と最強の経済成長力を擁し、一党独裁のもとで軍事的な拡張をめざす帝国で…