心身論

覚え書:「書評:脳のなかの天使 [著]V・S・ラマチャンドラン [評者]福岡伸一」、『朝日新聞』2013年06月02日(日)付。

- 脳のなかの天使 [著]V・S・ラマチャンドラン [評者]福岡伸一(青山学院大学教授・生物学) [掲載]2013年06月02日 [ジャンル]科学・生物 ■なぜ美を感じる? ヒトの特性に迫る ルリボシカミキリの青を、私は限りなく美しいと感じるが、ルリボシカミキリ自身…

書評:金森修『動物に魂はあるのか 生命を見つめる哲学』中公新書、2012年。

金森修『動物に魂はあるのか 生命を見つめる哲学』中公新書、読了。動物には魂があるのか、それとも機械なのか。本書はアリストテレスからデリダに至るまでの動物霊魂論……主として17-18世紀フランス思想……の系譜を読み直す試み。動物とは何かとの問いは人間…

書評:E・ブリニョルフソン、A・マカフィー(村井章子訳)『機械との競争』日経BP社、2013年。

- これらの例が示すように、パターン認識も複雑なコミュニケーションもいまや自動化が可能だとなれば、人間の能力でコンピュータに脅かされないものは、何かあるのだろうか。チェス盤の残り半分に進んでいっても、人間がしかるべき比較優位を維持できるもの…

書評:井上寿一『政友会と民政党 戦前の二大政党制に何を学ぶか』中公新書、2012年。

- 歴史の教訓 以上の戦前政党政治の歴史から何を学ぶべきか、三点にまとめ直してみる。 第一に、二大政党制よりも連立政権の重要性である。戦前の日本政治は、二大政党制の限界を克服するために、新しい政党間提携を模索した。同様に今の日本政治も、二大政…

「話さない」ことも、そして「いない」ということさえ表現かもしれない

- さて、「今朝、何、話したの?」と聞くと、子どもたちは、ほぼ決まって「えぇ、今朝、何話したっけ?」と呟く。私はこれだけでも、この授業(国語授業内での演劇教室のこと……引用者註)の意味があると考えている。話し言葉の教育とは、まずもって、自分の…

覚え書:「引用句辞典 トレンド編 『理解されない!』という嘆息=鹿島茂」、『毎日新聞』2013年04月27日(土)付。

----- 引用句辞典 トレンド編 「理解されない!」という嘆息 鹿島茂円滑に社会動かす妥協的システム 「理解されない!」という嘆息から、人は悲痛感に似た誇りを感じている。もし実に理解されてみよ。君のあらゆる価値と実質とが、カケネなしに計算され、白…

病院日記(4) 自分の生きている「世界」の広さ・狭さを自覚すること

- もしわれわれがあたりを自由に見まわし、生活世界において、あらゆる相対的なものの変移のうちにあっても不変なままにとどまるような形式的−普遍的なものを求めるならば、われわれは、生活しているわれわれにとってそれだけが世界についての次のような言い…

覚え書:「書評:ラカン [著]ポールロラン・アスン」、『朝日新聞』2013年04月21日(日)付。

- ラカン [著]ポールロラン・アスン [掲載]2013年04月21日 [ジャンル]歴史 著者:ポール=ローラン・アスン、西尾彰泰 出版社:白水社 価格:¥ 1,260Amazon.co.jp楽天ブックス紀伊國屋書店BookWebTSUTAYA online フロイトの後継を自認する精神分析家であり、…

病院日記(3) 洗う−洗われる 蜘蛛の糸の如き必然の対峙

病院仕事(看護助手)の介助入浴の見学を先日しましたが、昨日、実践に投入されました。先日の雑感→ 病院日記(2) アガンベンの「剥き出しの生」とレヴィナスの「倫理」より - Essais d’herméneutique 患者さんは全てを委ねざるを得ない点に「剥き出しの生…

書評:山田邦男『フランクルとの〈対話〉 苦境を生きる哲学』春秋社、2013年。

山田邦男『フランクルとの〈対話〉 苦境を生きる哲学』春秋社、読了。NHK・Eテレ「こころの時代」の放送を元に、名著『夜と霧』で有名なヴィクトール・E・フランクルを読み直す最新の入門書。震災以降注目を浴びるフランクルは「今、何を語りえるのか」…

病院日記(2) アガンベンの「剥き出しの生」とレヴィナスの「倫理」より

twのまとめですが(汗、先日、入浴介助の「見学」をしたのですが、その印象録を少し残しておきます。介護や医療の現場の人からすれば、「おまえ、どこまでナイーブなんや」とかいわれそうですが、まさに「驚きの神経内科」つうか……なので。キーワードは、…

覚え書:「みんなの広場 指導での罵声や暴力やめて」、『毎日新聞』2013年04月03日(水)付。

- みんなの広場 指導での罵声や暴力やめて 主婦 72(福岡市東区) 近所にある2カ所の公園では、土日は朝から小学生がそろいのユニホームで、野球やサッカーに余念がない。子供たちの頑張る姿が可愛いくて、買い物途中にそばを通ると時々足を止めて見学する…

覚え書:「手話からみた言語の起源 [著]高田英一 [評者]いとうせいこう」、『朝日新聞』2013年03月24日(日)付。

- 手話からみた言語の起源 [著]高田英一 [評者]いとうせいこう(作家・クリエーター) [掲載]2013年03月24日 [ジャンル]医学・福祉■言語は身振りから始まった? 手話を使う人が身振りと一緒に音声でしゃべることがある。二つの言語の同時使用を「シムコム」と…

覚え書:「書評:皮膚感覚と人間のこころ [著]傳田光洋 [評者]横尾忠則」、『朝日新聞』2013年03月03日(日)付。

- 皮膚感覚と人間のこころ [著]傳田光洋 [評者]横尾忠則(美術家) [掲載]2013年03月03日■触れるとなぜ気持ちいいのか 皮膚感覚という語は日常によく耳にするが、概念に対する身体感覚という意味で認識されているように思う。私たちは普段、皮膚に類する語を比…

覚え書:「引用句辞典 不朽版 『真の人生』の逆説=鹿島茂」、『毎日新聞』2013年02月27日(水)付。

- 引用句辞典 不朽版 「真の人生の逆説」 鹿島茂幼年時代を全肯定し一億総シュルレアリスト シュルレアリスムにのめりこむ精神は、自分の幼年時代の最良の部分を、昂揚とともにふたたび生きる。(中略)幼年時代やその他あれこれの思い出からは、どこか買い…

覚え書:「みんなの広場 五輪招致より選手の人権尊重」、『毎日新聞』2013年02月07日(木)付。

- みんなの広場 五輪招致より選手の人権尊重 無職 74(長崎市) 柔道全日本女子の園田隆二前監督のロンドン五輪代表選手らに対する暴力や暴言は誠に残念である。日本は20年夏季五輪の東京招致を目指しているが、今は柔道女子だけでなく全競技で選手の人権…

「私が私である」ことは、「私」以外のものによってしか証明されない。

- 先日わたしは、ある高名な画家の手になる詩を何編か読んだが、独創的なもので、ありきたりのものではなかった。たとい主題が何であっても、このような詩句のなかに、魂はいつも何かの戒めを聞きとるものだ。これらの詩句がそそぎこむ情感は、詩句にふくま…

覚え書:「女子柔道暴力問題:『監督だけ』不本意 選手側声明、抜本改革求める」、『毎日新聞』2013年02月05日(火)付。

- 女子柔道暴力問題:「監督だけ」不本意 選手側声明、抜本改革求める 毎日新聞 2013年02月05日 東京朝刊 柔道女子日本代表の園田隆二前監督(39)の暴力行為などを告発した女子選手15人の代理人を務める辻口信良弁護士(大阪弁護士会)らが4日、大阪市…

覚え書:「今週の本棚:中村桂子・評 『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』=ガイ・ドイッチャー著」、『毎日新聞』2013年01月13日(日)付。

- 今週の本棚:中村桂子・評 『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』=ガイ・ドイッチャー著 (インターシフト・2520円) ◇言語と思考の関係を科学の目で解き明かす 言語は思考に影響を与えるのだろうか。さまざまな言語に接することが多くなった昨今…

文化による単純な一般化は、人びとの考えを固定化するうえできわめて効果を発揮する

- 世界の人びとは−−おそらく必要以上に断固として−−文化は重要だという結論に達している。世界の人びとは明らかに正しい。文化はたしかに重要だ。しかし、本当に問われるべき問題は、「文化はどのように重要なのか?」なのである。前の二つの章で論じたよう…

覚え書:「書評:ヴェールの政治学 [著]ジョーン・W・スコット [評者]鷲田清一」、『朝日新聞』2012年12月16日(日)付。

- ヴェールの政治学 [著]ジョーン・W・スコット [評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)■仏共和制の矛盾、映し出した排除 2004年、フランス議会は、公立学校において宗教的帰属を「誇示」するアイテムの着用を禁じた法律を可決した。10年には、公共の場…

覚え書:「今週の本棚:村上陽一郎・評 『非合理性の哲学−アクラシアと自己欺瞞』=浅野光紀・著」、『毎日新聞』2012年12月09日(日)付。

- 今週の本棚:村上陽一郎・評 『非合理性の哲学−アクラシアと自己欺瞞』=浅野光紀・著 (新曜社・3990円) ◇“意志と行動”のへだたりを考える 哲学ときくと、それだけで拒否反応を示す読者もあるかもしれません。この本も「哲学」と銘打たれています。し…

過去は大家族で、現在存在する「核家族」はずっと昔から変わってこなかったのか?

- (6)皆が結婚するべきだという規範 中世におけるロマンティック・ラブは、騎士と貴婦人という限られた階層だけに許された存在だった。しかし近代におけるロマンティックラブを特徴づけるのは、ロマンティックラブが全てのひとに起こると考えられ始めたこ…

覚え書:「書評:私とは何か―「個人」から「分人」へ [著]平野啓一郎 [評者]福岡伸一」、『朝日新聞』2012年11月18日(日)付。

- 私とは何か―「個人」から「分人」へ [著]平野啓一郎 [評者]福岡伸一(青山学院大学教授・生物学) ■自分の中に自分はいない 学生時代、京都に住んだ時、興味深いことに気づかされた。東京では道路に囲まれた領域が町名・番地だったのに、京都では道を挟んで…

書評:田野大輔『愛と欲望のナチズム』講談社、2012年。

田野大輔『愛と欲望のナチズム』講談社、読了。ナチズムは性愛の乱れに厳しく、大戦後の道徳の復興を掲げたというイメージが強いし、それを証左する研究には類挙の暇がない。しかし、実際のところ、ナチスの「性」政策は多様である。本書は一枚岩ではないそ…

覚え書:「ひと 『戦争柄の着物』を収集し、研究する=乾淑子さん」、『毎日新聞』2012年11月03日(土)付。

- ひと 「戦争柄の着物」を収集し、研究する 乾淑子さん(60) 軍艦旗や大砲の間を縫って「占領」の文字が躍る絣(かすり)、満州建国を伝える新聞記事を染めた羽織の裏地−−。戦争をモチーフにした柄の着物を収集・研究して12年。コレクションは500枚を…

書評:アルンダティ・ロイ(本橋哲也訳)『民主主義のあとに生き残るものは』岩波書店、2012年。

本書は、大企業(市場主義)ヒンドゥー原理主義(ナショナリズム)が民主主義の名のもとに人々を抑圧するインドの苛烈な現状を告発するインド人作家の政治エッセイ集。そしてこの現実はインドだけでなく世界各地で現在進行形のことであると著者は指摘する。…

覚え書:「踊ってはいけない国、日本 風営法問題と過剰規制される社会 [編著]磯部涼 [評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)」、『朝日新聞』2012年10月28日(日)付。

- 踊ってはいけない国、日本 風営法問題と過剰規制される社会 [編著]磯部涼 [評者]いとうせいこう(作家・クリエーター) [掲載]2012年10月28日■人類的行為を抑圧する不均衡 一般に風営法と呼ばれる法律によって、特にここ数年、大阪を中心としてクラブが摘発…

覚え書:「異論反論 発達障害への理解が求められています=雨宮処凛」、『毎日新聞』2012年8月29日(水)付。

- 異論反論 発達障害への理解が求められています 寄稿 雨宮処凛排除より受け皿整備を 先月末、大阪地裁の裁判員裁判で下されたひとつの判決が波紋を広げている。 ある殺人事件を巡っての裁判だ。被告は42歳の男性。殺されたのは、46歳の安。小学5年生の頃か…

「もしそこに怪物どもがいなかったなら、このさもしさはなかったろう」と……って怪物は私であり貴方であること。

- ところで、倫理的な断罪のある一定の形体において、否定するという逃避的なやりかたがある。要するに、こう言うのだ。もしそこに怪物どもがいなかったなら、このさもしさはなかったろう、と。この荒っぽい判断においては、怪物どもは可能性から切除されて…