2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧
- 今週の本棚:養老孟司・評 『虫から始まり虫で終わる』=大澤省三・著 (クバプロ・2940円) ◇基礎研究が実を結んだ昆虫進化学の大成果 基礎科学という仕事は地味である。たとえノーベル賞をもらうような優れた業績があっても、それがどんな仕事だった…
- 私が年来主張してきたことは、大型化・集中化・一様化とは対極的な、小型化・分散化・多様化の技術への転換である。太陽光発電、井戸水の利用、小川の急流を利用した小型水力発電、家畜の排泄物からのメタンガス発電、地熱や潮流を利用した発電、熱と電気…
- 今週の本棚:鹿島茂・評 『パリ解放 1944−49』=A・ビーヴァー、A・クーパー著 (白水社・4410円) ◇大国に翻弄された仏秘史を綴れ織りに ベルリン陥落やスペイン内戦のノンフィクションで知られるイギリス人歴史家が夫人の作家アーテミス・ク…
- かつて思想家としての編集者は存在しなかった。教会や国家がその役割を果たしていたのである。しかし近代に起こった教会と国家の世俗化と表現の自由の獲得の歴史は、編集者が思想家であることを可能にし、それを求めるようになった。しかし他方で思想は検…
- 今週の本棚:中村達也・評『反転する福祉国家−オランダモデルの光と影』=水島治郎・著 (岩波書店・3360円) ◇「政労使」合意による働き方改革の「今」 オランダといえば、何を連想するだろうか。風車、チューリップ、ゴッホやフェルメールの絵……。本…
- 時代の風 アジア・大平洋の未来 ジャック・アタリ 仏経済学者・思想家「平和と成長」世界の利益 私は30年前、世界の重心が「大西洋」から「大平洋」に向けて移動し始めたと指摘した。重心の移動は米西海岸に端を発し、今や大平洋をはさんだ対岸(アジア)…
- 今週の本棚:池内紀・評 『私はホロコーストを見た 上・下』=ヤン・カルスキ著 (白水社・各2940円) ◇世界に届かなかった「虐殺」真実の証言 ヤン・カルスキは本名ヤン・コジェレフスキ。一九一四年、ポーランド中部の工業都市ウッチの生まれ。大学で…
- 「然るに此の仏法も、初生の時より治者の党に入りて其の力に帰依せざる者なし。古来、名僧智識と称する者、或は入唐して法を求め、或は自国に在りて新教を開き、人を教化し寺を建つるもの多しと雖ども、大概皆、天子将軍等の眷顧を微倖し、其の余光を仮り…
- ひと 福岡教育大講師になった韓国人視覚障害者 韓 星民(ハン スンミン)さん(41) 「視覚障害者教育の支援に役立つけんきゅうがしたい」。20年前の来日後、目に合うルーペとの出合いで生活が一変し、支援機器の重要性を実感した経験がそう語らせる。…
- 長い間勤め人として暮らしてきたので、やめるには相当の決心が必要だったが、もともと頑健とはいえない身体で、会社勤めと小説書きを兼ねる生活は、そう長くは勤まるまいという予感があったので、そう深刻には悩まないで済んだ。 しかし長年の生活習慣を、…
- 遊覧・もうひとつの現代史 東京都江東区亀戸周辺 苅部直追悼碑と記念碑 この9月1日は、関東大震災が起こってから八十九年となる日。ぞろ目の八十八と切りのいい九十との間の地味な間合いではあるが、この震災で大きな被害を受けた亀戸近辺に行ってみよう…
坂本義和『人間と国家 ある政治学徒の回想』岩波新書、読了。戦後日本の進歩的知識人の一人で国際政治学をリードしてきた著者の、上下二巻にわたる自伝的回想。中国で生まれ戦中日本で教育を受けた氏は、国家とどう向き合うかが課題だった。その格闘の思想形…
- みんなの広場 維新の会政治塾は矛盾している 無職 65(神戸市兵庫区) 橋下徹・大阪市長率いる大阪維新の会が次期衆院選をにらんで始めた政治塾に少なくとも68人の現職地方議員が参加し、さらには国家公務員・地方公務員も20人と報じられた。はてさて、こ…
- 「テロリズム」という言葉の使い方を彼(引用者注……ノーム・チョムスキーのこと)は分析して、国家権力の責任者が、自分たちの側の活動について、この言葉をかぶせないという特色をあげる。 もともと、テロの支配という言葉は、フランス大革命について使わ…
- 「メディアと知識人 −−清水幾太郎の覇権と忘却」中央公論新社・2415円 著者 竹内洋さん転向論の枠組み超えて 清水幾太郎の名は、ある世代以上には広く知られていよう。社会学者で、戦後の講和論争や「60年安保闘争」を代表する知識人。なおかつ、晩年…
大川が所長を務めた東亜経済調査局附属研究所(通称「大川塾」)。本書はその卒業生を取材し、戦前戦中昭和の東南アジアとの関わりを描き出す。理念と現実の格闘、善意と押し付けの間で揺れる人々の軌跡を活写する。吉野作造関係で(大川の学位取得に吉野は…
- 今週の本棚:川本三郎・評 『ウッドストックへの道』=マイケル・ラング著 (小学館・2940円) ◇伝説のヴェトナム反戦「野外音楽フェス」の青春 一九六〇年代に青春を送った者は、たとえどんなに意見が対立していてもウッドストックのことを思い出せば…
- 気になる現場学 第6回 東京都渋谷区、福島県いわき市 開沼博 伝統的な宗教 今も救い 不安な時代の小さな灯 「難しそう」「表立って話題にしづらい」ーー。日本社会に暮らす多くの人にとって、「宗教」はとっつきにくいものかもしれない。しかし、世界中ど…
- 今週の本棚:張競・評 『文明−−西洋が覇権をとれた6つの真因』=ニーアル・ファーガソン著 (勁草書房・3465円) ◇西洋文明は果たして没落するか 十六世紀からおよそ五百年のあいだに、西洋文明は世界制覇を実現した。スペイン、ポルトガル、イギリス…
坂本義和『人間と国家 ある政治学徒の回想』岩波新書、読了。戦後日本の進歩的知識人の一人で国際政治学をリードしてきた著者の、上下二巻にわたる自伝的回想。中国で生まれ戦中日本で教育を受けた氏は、国家とどう向き合うかが課題だった。その格闘の思想形…
- 今週の本棚:丸谷才一・評 『チチェローネ 建築篇・絵画篇』=ヤーコプ・ブルクハルト著 (中央公論美術出版・3万9900円、3万4650円) ◇暮しを立てる為の旅行案内が不朽の名著に 小林秀雄がはじめて奈良へ行ったのは、和辻哲郎の『古寺巡礼』(一…
- 今日の選挙界で一番つよく物言うものは金力と権力である。選挙は人民の意嚮を訊ねるのだという。理想としては彼らの自由な判断を求めたいのである。人民大多数の支持が期せずして集まったというところに、冒しがたい強みもあれば退けたい正しさもあるのだ…
- くらしの明日 私の社会保障論 生活保護「見直し」の意味 湯浅誠 反貧困ネットワーク事務局長「生きられる社会」をあきらめない 8月17日に、13年度予算の概算要求基準が閣議決定された。その中に次の一文がある。 「特に財政に大きな負荷となっている…
- 被災者にとって、被災地は「生活」の場だが、それ以外の者にとって、被災地は「事件」の場だ。「事件」の現場と思って赴くと、そこには「生活」がある。あたりまえのことに不意に衝かれる感覚。阪神・淡路大震災という事件が、地下鉄サリン事件という新た…
- 引用句辞典 不朽版 政治家・橋下徹 鹿島茂この男は常に大衆を味方に持つであろう。この男は宇宙に確信を持っているように自分に確信を持っているからだ。それが大衆の気に入ることなのである。大衆は断言を求めるので、証拠は求めない。証拠は大衆を動揺さ…
カトリック中央協議会に勤務する著者による訳著。カトリックの現代世界の諸問題に対する見解を幅広くまとめた一冊。全体として、第2バチカン公会議以降、カトリックは何を目指すのか、著者の主張も交え、その全体を素描する。極めて現代的な話題が多く、大変…
- 異論反論 発達障害への理解が求められています 寄稿 雨宮処凛排除より受け皿整備を 先月末、大阪地裁の裁判員裁判で下されたひとつの判決が波紋を広げている。 ある殺人事件を巡っての裁判だ。被告は42歳の男性。殺されたのは、46歳の安。小学5年生の頃か…
- 私自身についていうならば、およそ政治制度や政治形態について、「究極」とか「最良」とかいう絶対的判断を下すことに反対である。(この点、本書の「ある自由主義者への手紙」〔本集第四巻……引用者注、『丸山眞男集』岩波書店のこと〕参照。ただしそこで…