宗教学

書評:山田晶『アウグスティヌス講話』講談社学術文庫、1995年。

山田晶『アウグスティヌス講話』講談社学術文庫、1995年、読了。筆者が北白川教会でアウグスティヌスについて「打解けた気分」で縦横に語った六話をまとめた一冊。1、アウグスティヌスと女性、2、煉獄と地獄、3、ペルソナとペルソナ性、4、創造と悪、5…

日記:学者、思想家のガウンを著けた大親分

- もちろん、思想と生活とは不可分のものであるといふこともいへるだらう。思想だけのものがその実生活に現はれ、又、実生活だけのものが、思想に現はれると、かやうにいふことも出来るだらう。しかし、僕は考へる。先生の場合に於いては、大正五年頃から『…

書評:ヴォルフガング・シュヴェントカー(野口雅弘、鈴木直、細井保、木村裕之訳)『マックス・ウェーバーの日本 受容史の研究1905‐1995』みすず書房、2013年。

W・シュヴェントカー(野口雅弘、鈴木直、細井保、木村裕之訳)『マックス・ウェーバーの日本 受容史の研究1905‐1995』みすず書房、2013年、読了。出版部数の2/3はドイツではなく日本で売れた!大正時代から現代まで−−本書は日本のウェーバー研究とその受容…

日記:「全国のホテルに古事記を置こう!」プロジェクトのいかがわしさについて……

竹田研究財団が『古事記』編纂1300年を記念して「全国のホテルに古事記を置こう!」プロジェクトを立ち上げたそうですが、少しだけコメンタリーを残しておこうと思います。同webによると概要は次の通り。 - 一般財団法人竹田研究財団 『古事記』編纂1300年記…

日記:民本主義のアクチュアリティ

- すなわち、大逆事件以来、「我国でアナーキズムと云へば直ちに飛んでもない大それた事を計画する反逆人のやうに思ひ做さるるを常とする」が、そういう「破壊の為に破壊を事とする」ような「消極的アナーキズム」以来に「積極的アナーキズム」といえるもの…

日記:有機的知識人としての吉野作造

- 知ることから理解することへの移行 知ることから理解すること、感じることへの移行、あるいはその逆に感じることから理解すること、知ることへの移行。民衆的分子は「感じる」ことはあっても、つねに理解し、知るとはかぎらない。また知識人分子は「知る」…

覚え書:「書評:池田晶子 不滅の哲学 若松英輔著」、『聖教新聞』2014年01月08日(水)付。

- 池田晶子 不滅の哲学 若松英輔著「言葉」は自身を絶望から救う 「苦難や危機に際して人が本当に必要とするものは、必ず言葉であって、金や物ではあり得ない」(池田晶子)。著者は、池田晶子が残した言葉を手掛かりに「言葉」と哲学とを考えていく。 「言…

書評:師岡カリーマ・エルサムニー『変わるエジプト、変わらないエジプト』白水社、2012年。

師岡カリーマ・エルサムニー『変わるエジプト、変わらないエジプト』白水社、読了。11年の政変以来揺れ続けるエジプトについて私たちはどれだけのことを知っているのだろうか。ピラミッド? イスラーム? 最も歴史の長い地域のことを殆ど知らないのではな…

日記:本来両立し得ない「祝日には日の丸を掲揚しましょう」と「初詣は氏神様から」

近所のお宮さん、普段は「祝日には日の丸を掲揚しましょう」との掲示ですが、正月は「初詣は氏神様から」になる。何というかこのダブスタにはいつも脱力してしまう。何かと言えば、それはnationalism と patriotismを混同していることだ。僕自身はpatriotism…

書評:ロナルド・H・フリッツェ(尾澤和幸訳)『捏造される歴史』原書房、2012年。

ロナルド・H・フリッツェ『捏造される歴史』原書房、読了。「アトランティス大陸」から「天地創造説のなかの人種差別」まで−−。本書はアメリカにおける疑似歴史、疑似科学隆盛の歴史と現在、そしてその受容心象を明らかにする一冊。 疑似科学的なるものを荒…

覚え書:「<東日本大震災>宗教が果たした役割とは 不安な夜、頼り、支えられ」、『毎日新聞』2013年11月21日(木)付。

- <東日本大震災>宗教が果たした役割とは 不安な夜、頼り、支えられ 毎日新聞 11月21日(木) <東日本大震災>宗教が果たした役割とは 不安な夜、頼り、支えられ300人を超える住民が犠牲になった宮城県東松島市野蒜地区。全国から集まった青年僧侶約30…

覚え書:「論点 [国のために死ぬこと] 黙する死者と向き合う=若松英輔」、『毎日新聞』2013年10月18日(金)付。

- 論点 [国のために死ぬこと] 靖国神社は昨日から秋の例大祭。安倍晋三首相は言う。 「国のために戦って命を落とした人たちに尊崇の念を表すのは当然。欧米各国でも行われている自然な国家儀礼で、非難されるいわれはない」 耳になじんだこの説明を、歴史…

日記:2013年度パピルス賞:植木雅俊訳註『梵漢和対照・現代語訳 維摩経』岩波書店。

「制度としてのアカデミズムの外で達成された学問的業績」や「科学ジャーナリストによる業績」を顕彰する「パピルス賞」に、植木雅俊訳註『梵漢和対照・現代語訳 維摩経』(岩波書店)が選ばれたとのこと。昨日十日は中村元博士のご命日。中村先生の最晩年の…

書評:マーク・ユルゲンスマイヤー(立山良司監修、古賀林幸、櫻井元雄訳)『グローバル時代の宗教とテロリズム いま、なぜ神の名で人の命が奪われるのか』明石書店、2003年。

マーク・ユルゲンスマイヤー『グローバル時代の宗教とテロリズム いま、なぜ神の名で人の命が奪われるのか』明石書店、読了。宗教は本来、暴力に終止符を打ち、平和と秩序をもたらすものだが、「平和」を実現するために戦っているのが宗教の歴史。本書は、宗…

覚え書:「悼む ロバート・ベラーさん 米宗教社会学者」、『毎日新聞』2013年09月23日(月)付。

- 悼む ロバート・ベラーさん 米宗教社会学者 7月30日死去・86歳魅力的な思考展開 ロバート・ベラーはいかにも学者らしい学者だったが、また荒野を彷徨い、神に問いかける預言者のようでもあった。ウェーバーやデュルケム以来の、人類史的・文明史的な…

日記:他人はみなそれぞれかけがえのないものですけれども、私たちは全員の死ををひとしく哀悼することができません

- ポワリエ 他人はみなそれぞれかけがえのないものですけれども、私たちは全員をひとしく愛することができません…… レヴィナス まさしく、それゆえに、私たちは、私が倫理的秩序あるいは聖性の秩序あるいは慈悲の秩序あるいは愛の秩序あるいは慈愛の秩序と呼…

書評:「山形孝夫著『黒い海の記憶』(岩波書店)」、『第三文明』2013年10月、86頁。

- 書評『黒い海の記憶 いま、死者の語りを聞くこと』 山形孝夫・著 岩波書店・2,100円死者を記憶し、死者に向き合う「新しい霊性」 「泣くこと」も「死者と語り合うこと」も現代人にとっては禁忌(きんき)の対象であろう。バラエティー番組のオカルト趣味は…

研究ノート:反ユダヤ主義の反ナチズム闘争のヒーローという問題

- 問題はこのようなキリスト教揺籃期の受難物語の元説が、ヨーロッパ中のすべてのキリスト教徒を途方もないユダヤ人憎悪に追い込んでいったという事実にあるのですが、それがユダヤ人問題として急速に加速されたのは、イベリア半島におけるレコンキスタ(八…

日記:山形孝夫『黒い海の記憶 いま、死者の語りを聞くこと』岩波書店、2013年、ファーストインプレッション。

- 私たちは、3・11の大震災まで、近代日本の合理的で安全な国民国家に住んでいると思っていた。そこでは、生活のあらゆる領域に合理性と安全性がゆきわたり、それが政治・経済のシステムを法的に支え、政教分離や福祉・教育行政の専門技術化とあいまって、…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『現代オカルトの根源 霊性進化論の光と闇』=大田俊寛・著」、『毎日新聞』2013年07月28日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『現代オカルトの根源 霊性進化論の光と闇』=大田俊寛・著 毎日新聞 2013年07月28日 東京朝刊 (ちくま新書・840円) 憎悪発言(ヘイトスピーチ)デモから一部の脱原発運動、政治家の「慰安婦」発言まで、「自分たちが純粋な被害者/…

書評:中西竜也『中華と対話するイスラーム 17−19世紀中国ムスリムの思想的営為』京都大学学術出版会、2013年。

中西竜也『中華と対話するイスラーム 17−19世紀中国ムスリムの思想的営為』京都大学学術出版会、読了。俗にイスラームは商人の宗教といわれたように、在中ムスリムはイスラーム勃興期に起源をもつ。本書は、アジア各地からやってきたムスリム移民の土着内開…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『未解決事件 オウム真理教秘録』=NHKスペシャル取材班・編」、『毎日新聞』2013年07月07日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『未解決事件 オウム真理教秘録』=NHKスペシャル取材班・編 毎日新聞 2013年07月07日 東京朝刊 (文藝春秋・1680円) 昨年5月に放送されたNHKスペシャル「未解決事件『オウム真理教』」−−。その中で伝えきれなかった警察や元…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『出雲大社 日本の神祭りの源流』=千家和比古、松本岩雄・編」、『毎日新聞』2013年06月30日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『出雲大社 日本の神祭りの源流』=千家和比古、松本岩雄・編 毎日新聞 2013年06月30日 東京朝刊 (柊風舎・1995円) 「平成の大遷宮」で関心が集まる出雲大社を歴史・考古・民俗・宗教学など多様な観点から分析している。神社とは?…

書評:R・E・ルーベンスタイン『殺す理由 なぜアメリカ人は戦争を選ぶのか』紀伊國屋書店、2013年。

- 別の言い方をするなら、戦争は通常アメリカ国民に対して、この市民宗教の諸原理によって−−要求されないまでも−−正当化されるものとして売りこまれるということだ。社会学者のロバート・N・ベラー〔一九二三生〕によれば、市民宗教とはものの見方や信念や…

覚え書:「書評:犬の伊勢参り [著]仁科邦男 [評者]田中優子」、『朝日新聞』2013年05月19日(日)付。

- 犬の伊勢参り [著]仁科邦男 [評者]田中優子(法政大学教授・近世比較文化) [掲載]2013年05月19日 [ジャンル]歴史 ■群衆と動物が入り交じった時代 犬が伊勢参りをした最初の記録は一七七一年だそうだ。それ以来まさに「ぞくぞくと」犬の参宮が見られたのだっ…

書評:鎌田道隆『お伊勢参り 江戸庶民の旅と信心』中公新書、2013年。

- 何よりも歩くうえで困るのは、旅人のために設けられていた茶店や立場(たてば)という休憩所がなくなったことである。江戸時代の街道では、歩き疲れたり、一息入れたりする茶店や立場が、渡河点や峠の上など随所に設けられていて、旅人たちは実際に活用し…

覚え書:「書評:ろくでなしのロシア―プーチンとロシア正教 [著]中村逸郎 [評者]保阪正康」、『朝日新聞』2013年04月28日(日)付。

- ろくでなしのロシア―プーチンとロシア正教 [著]中村逸郎 [評者]保阪正康(ノンフィクション作家) [掲載]2013年04月28日 [ジャンル]国際 ■結託して神聖さを醸成する 著者は、ロシア現代政治を専門とする研究者だが、しばしばモスクワに滞在して、この国の現…

葬式についての雑感(2)

- 私の父は大学を定年引退したあとに熱心な仏教徒になったが、決して寺に行くことも僧侶の話を聞くこともなかった。日本の仏教は戦争犯罪を行い、反省をしていないと考えていたのである。それで父親は死ぬ数日前に、手書きの短い遺言を書いた。自分の死に際…

書評:浅見雅一、安延苑『韓国とキリスト教 いかにして国家的宗教になりえたか』中公新書、2012年。

- 教会成長理論は、一九六〇年代にフラー神学校で始まった新しい宣教学の理論である。フラー神学校の宣教学とは、教会成長を目的として、神学的要素のうえに社会科学と行動科学を統合させた理論であった。それに実践的要素を加えたものが教会成長理論と呼ば…

覚え書:「書評:明治神宮―「伝統」を創った大プロジェクト [著]今泉宜子 [評者]保阪正康」、『朝日新聞』2013年04月14日(日)付。

- 明治神宮―「伝統」を創った大プロジェクト [著]今泉宜子 [評者]保阪正康(ノンフィクション作家) [掲載]2013年04月14日 [ジャンル]ノンフィクション・評伝 ■造営に挑んだ無数の庶民の姿 明治神宮造営運動は、明治天皇逝去の2日後から始まったという。渋沢…