神学

覚え書:「書評:池田晶子 不滅の哲学 若松英輔著」、『聖教新聞』2014年01月08日(水)付。

- 池田晶子 不滅の哲学 若松英輔著「言葉」は自身を絶望から救う 「苦難や危機に際して人が本当に必要とするものは、必ず言葉であって、金や物ではあり得ない」(池田晶子)。著者は、池田晶子が残した言葉を手掛かりに「言葉」と哲学とを考えていく。 「言…

書評:師岡カリーマ・エルサムニー『変わるエジプト、変わらないエジプト』白水社、2012年。

師岡カリーマ・エルサムニー『変わるエジプト、変わらないエジプト』白水社、読了。11年の政変以来揺れ続けるエジプトについて私たちはどれだけのことを知っているのだろうか。ピラミッド? イスラーム? 最も歴史の長い地域のことを殆ど知らないのではな…

日記:本来両立し得ない「祝日には日の丸を掲揚しましょう」と「初詣は氏神様から」

近所のお宮さん、普段は「祝日には日の丸を掲揚しましょう」との掲示ですが、正月は「初詣は氏神様から」になる。何というかこのダブスタにはいつも脱力してしまう。何かと言えば、それはnationalism と patriotismを混同していることだ。僕自身はpatriotism…

書評:ロナルド・H・フリッツェ(尾澤和幸訳)『捏造される歴史』原書房、2012年。

ロナルド・H・フリッツェ『捏造される歴史』原書房、読了。「アトランティス大陸」から「天地創造説のなかの人種差別」まで−−。本書はアメリカにおける疑似歴史、疑似科学隆盛の歴史と現在、そしてその受容心象を明らかにする一冊。 疑似科学的なるものを荒…

覚え書:「<東日本大震災>宗教が果たした役割とは 不安な夜、頼り、支えられ」、『毎日新聞』2013年11月21日(木)付。

- <東日本大震災>宗教が果たした役割とは 不安な夜、頼り、支えられ 毎日新聞 11月21日(木) <東日本大震災>宗教が果たした役割とは 不安な夜、頼り、支えられ300人を超える住民が犠牲になった宮城県東松島市野蒜地区。全国から集まった青年僧侶約30…

覚え書:「第67回毎日出版文化賞 力作そろう トマス・アクィナス 神学大全」、『毎日新聞』2013年11月03日(日)付。

- 第67回毎日出版文化賞 力作そろうトマス・アクィナス 神学大全 全45巻完結 稲垣良典他訳(創文社・3990〜7980円)=企画部門世紀またいだ偉業 キリスト教神学最高の達成「神学大全」は今日も燦然と輝きを放つ。その翻訳が52年の歳月を経てい…

覚え書:「論点 [国のために死ぬこと] 黙する死者と向き合う=若松英輔」、『毎日新聞』2013年10月18日(金)付。

- 論点 [国のために死ぬこと] 靖国神社は昨日から秋の例大祭。安倍晋三首相は言う。 「国のために戦って命を落とした人たちに尊崇の念を表すのは当然。欧米各国でも行われている自然な国家儀礼で、非難されるいわれはない」 耳になじんだこの説明を、歴史…

日記:2013年度パピルス賞:植木雅俊訳註『梵漢和対照・現代語訳 維摩経』岩波書店。

「制度としてのアカデミズムの外で達成された学問的業績」や「科学ジャーナリストによる業績」を顕彰する「パピルス賞」に、植木雅俊訳註『梵漢和対照・現代語訳 維摩経』(岩波書店)が選ばれたとのこと。昨日十日は中村元博士のご命日。中村先生の最晩年の…

書評:マーク・ユルゲンスマイヤー(立山良司監修、古賀林幸、櫻井元雄訳)『グローバル時代の宗教とテロリズム いま、なぜ神の名で人の命が奪われるのか』明石書店、2003年。

マーク・ユルゲンスマイヤー『グローバル時代の宗教とテロリズム いま、なぜ神の名で人の命が奪われるのか』明石書店、読了。宗教は本来、暴力に終止符を打ち、平和と秩序をもたらすものだが、「平和」を実現するために戦っているのが宗教の歴史。本書は、宗…

覚え書:「悼む ロバート・ベラーさん 米宗教社会学者」、『毎日新聞』2013年09月23日(月)付。

- 悼む ロバート・ベラーさん 米宗教社会学者 7月30日死去・86歳魅力的な思考展開 ロバート・ベラーはいかにも学者らしい学者だったが、また荒野を彷徨い、神に問いかける預言者のようでもあった。ウェーバーやデュルケム以来の、人類史的・文明史的な…

書評:渡部良三『歌集 小さな抵抗 殺戮を拒んだ日本兵』岩波書店、2011年。

渡部良三『歌集 小さな抵抗 殺戮を拒んだ日本兵』岩波書店、読了。神は「汝殺す勿れ」と命じ、軍人勅諭は「下級のものは上官の命を承ること、実は直に朕が命を承る義」と命じた。著者は前者を選んだ無教会キリスト者。学徒出陣で中国大陸へ渡った。度胸試し…

日記:他人はみなそれぞれかけがえのないものですけれども、私たちは全員の死ををひとしく哀悼することができません

- ポワリエ 他人はみなそれぞれかけがえのないものですけれども、私たちは全員をひとしく愛することができません…… レヴィナス まさしく、それゆえに、私たちは、私が倫理的秩序あるいは聖性の秩序あるいは慈悲の秩序あるいは愛の秩序あるいは慈愛の秩序と呼…

日記:Go to the people

Go to the people live among them love them learn from them start with what they know build on what they have But of the best leader when the task is accomplished the work is done people all remark we have done it ourselves 晏陽初(Yen Yang…

書評:「山形孝夫著『黒い海の記憶』(岩波書店)」、『第三文明』2013年10月、86頁。

- 書評『黒い海の記憶 いま、死者の語りを聞くこと』 山形孝夫・著 岩波書店・2,100円死者を記憶し、死者に向き合う「新しい霊性」 「泣くこと」も「死者と語り合うこと」も現代人にとっては禁忌(きんき)の対象であろう。バラエティー番組のオカルト趣味は…

研究ノート:反ユダヤ主義の反ナチズム闘争のヒーローという問題

- 問題はこのようなキリスト教揺籃期の受難物語の元説が、ヨーロッパ中のすべてのキリスト教徒を途方もないユダヤ人憎悪に追い込んでいったという事実にあるのですが、それがユダヤ人問題として急速に加速されたのは、イベリア半島におけるレコンキスタ(八…

日記:山形孝夫『黒い海の記憶 いま、死者の語りを聞くこと』岩波書店、2013年、ファーストインプレッション。

- 私たちは、3・11の大震災まで、近代日本の合理的で安全な国民国家に住んでいると思っていた。そこでは、生活のあらゆる領域に合理性と安全性がゆきわたり、それが政治・経済のシステムを法的に支え、政教分離や福祉・教育行政の専門技術化とあいまって、…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『現代オカルトの根源 霊性進化論の光と闇』=大田俊寛・著」、『毎日新聞』2013年07月28日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『現代オカルトの根源 霊性進化論の光と闇』=大田俊寛・著 毎日新聞 2013年07月28日 東京朝刊 (ちくま新書・840円) 憎悪発言(ヘイトスピーチ)デモから一部の脱原発運動、政治家の「慰安婦」発言まで、「自分たちが純粋な被害者/…

書評:中西竜也『中華と対話するイスラーム 17−19世紀中国ムスリムの思想的営為』京都大学学術出版会、2013年。

中西竜也『中華と対話するイスラーム 17−19世紀中国ムスリムの思想的営為』京都大学学術出版会、読了。俗にイスラームは商人の宗教といわれたように、在中ムスリムはイスラーム勃興期に起源をもつ。本書は、アジア各地からやってきたムスリム移民の土着内開…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『未解決事件 オウム真理教秘録』=NHKスペシャル取材班・編」、『毎日新聞』2013年07月07日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『未解決事件 オウム真理教秘録』=NHKスペシャル取材班・編 毎日新聞 2013年07月07日 東京朝刊 (文藝春秋・1680円) 昨年5月に放送されたNHKスペシャル「未解決事件『オウム真理教』」−−。その中で伝えきれなかった警察や元…

書評:R・E・ルーベンスタイン『殺す理由 なぜアメリカ人は戦争を選ぶのか』紀伊國屋書店、2013年。

- 別の言い方をするなら、戦争は通常アメリカ国民に対して、この市民宗教の諸原理によって−−要求されないまでも−−正当化されるものとして売りこまれるということだ。社会学者のロバート・N・ベラー〔一九二三生〕によれば、市民宗教とはものの見方や信念や…

書評:鎌田道隆『お伊勢参り 江戸庶民の旅と信心』中公新書、2013年。

- 何よりも歩くうえで困るのは、旅人のために設けられていた茶店や立場(たてば)という休憩所がなくなったことである。江戸時代の街道では、歩き疲れたり、一息入れたりする茶店や立場が、渡河点や峠の上など随所に設けられていて、旅人たちは実際に活用し…

覚え書:「書評:ろくでなしのロシア―プーチンとロシア正教 [著]中村逸郎 [評者]保阪正康」、『朝日新聞』2013年04月28日(日)付。

- ろくでなしのロシア―プーチンとロシア正教 [著]中村逸郎 [評者]保阪正康(ノンフィクション作家) [掲載]2013年04月28日 [ジャンル]国際 ■結託して神聖さを醸成する 著者は、ロシア現代政治を専門とする研究者だが、しばしばモスクワに滞在して、この国の現…

葬式についての雑感(2)

- 私の父は大学を定年引退したあとに熱心な仏教徒になったが、決して寺に行くことも僧侶の話を聞くこともなかった。日本の仏教は戦争犯罪を行い、反省をしていないと考えていたのである。それで父親は死ぬ数日前に、手書きの短い遺言を書いた。自分の死に際…

葬儀という「文化」

4月24日の水曜日の朝。91歳で祖母(父の母)が無くなりました。夕方、連絡を受け、その日の夜勤をこなし、翌朝からの仕事へ出勤して、忌引きの調整をして、夜遅くに実家へ戻り、ご挨拶を済ませてきました。金曜日の朝、葬儀。骨あげと初七日を済ませ、…

書評:浅見雅一、安延苑『韓国とキリスト教 いかにして国家的宗教になりえたか』中公新書、2012年。

- 教会成長理論は、一九六〇年代にフラー神学校で始まった新しい宣教学の理論である。フラー神学校の宣教学とは、教会成長を目的として、神学的要素のうえに社会科学と行動科学を統合させた理論であった。それに実践的要素を加えたものが教会成長理論と呼ば…

書評:長谷川修一『聖書考古学 遺跡が語る史実』中公新書、2013年。

- 「聖書に書かれていることって本当に起こったことだろうか?」 「歴史的に証明されているのか?」 「考古学はそれを裏づけしているのか?」 本書ではこうした疑問に対して、最新の歴史研究の成果と考古学的調査の成果を使ってできるかぎり答えていく。途中…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『世界宗教百科事典』=井上順孝ほか編集委員会編」、『毎日新聞』2013年04月07日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『世界宗教百科事典』=井上順孝ほか編集委員会編 毎日新聞 2013年04月07日 東京朝刊 (丸善出版・2万1000円) かつて高校社会科に「倫理・社会」という科目があったが、近年の高校生の、とくに宗教に対する関心は著しく薄らいでい…

書評:S.グリーンブラット(河野純治訳)『一四一七年、その一冊が全てを変えた』柏書房、2012年。

S.グリーンブラット『一四一七年、その一冊が全てを変えた』柏書房、読了。ルネサンス黎明期のイタリア。主人公はポッジョ・ブラッチョリーニ。教皇庁祐筆の人文主義「ブックハンター」の物語。歴史を変えるのは活版印刷でもガリレオでもない。古代ローマ…

研究ノート:南原繁と吉野作造

- (2)人間人格と自由の精神 南原思想の現代的意味を尋ねるならば、その一つは何と言っても「人間人格の自由」「良心の自由」の根拠、神的な根拠を語って、それによって実践的に生きたことでしょう。その「良心の自由」は、彼にとっては人間性に生得的なも…

書評:新井政美編著『イスラムと近代化 共和国トルコの苦闘』講談社、2013年。

新井政美編著『イスラムと近代化 共和国トルコの苦闘』講談社、読了。イスラムは「反近代的」か。イスラムと近代的価値観の対立・調和の実験場=トルコの近現代史を材料に、本書は、共和国トルコの「苦悶」の歩みから「近代化」「政教分離」「世俗化」の内在…