神学

日記:中村元先生の「ドイツ語」を介して

- 中村が、一高でペツォルトと出会ったのは、一九三〇年のことだから、ペツォルトが仏教の個人授業を受け始めて十三年経ったころである。ペツォルトの授業は、小学校の教科書をドイツ語に翻訳するという内容だった。その授業の中で、ペツォルトはよく仏教に…

拙文:「書評:南原繁研究会編『南原繁と国際政治 永久平和を求めて』 南原繁に学ぶ『現実』を『理念』に近づける営み」、『第三文明』2014年10月、第三文明社、94頁。

- 書評 『南原繁と国際政治 永久平和を求めて』 南原繁研究会編 EDITEX 定価2,000円+税南原繁に学ぶ「現実」を「理念」に近づける営み 先哲の思索に学ぶとは一体どういうことだろうか。それは無批判にありがたく御輿(みこし)を担ぐことでもな…

日記:南原繁研究会第3回研究発表会

8月30日(土)は、南原繁研究会第3回研究発表会(学士会館、13:00〜)に参加し、ひとつ発表してきました。プログラムは次の通り第1部 「国家と宗教」の岩波文庫化をめぐって 加藤節 南原繁と平和思想 戦後和解と戦争罪責に関する一考察 豊川慎 東大キリ…

覚え書:「吉野作造の直筆展示 原敬暗殺を運不運で語る世相批判・宮城」、『毎日新聞』2014年7月10日(木)付。

- 吉野作造の直筆展示 原敬暗殺を運不運で語る世相批判 大崎・記念館「人の値打ちは人格と事跡で評価」(写真キャプション)原敬の暗殺について吉野作造が記した直筆原稿=大崎市古川で 「平民宰相」と呼ばれた原敬(1856〜1921年)の暗殺について記…

日記:南原繁と吉野作造 その信仰における屹立さと中庸

月末に南原繁のキリスト教信仰の独自性(修養倫理のキリスト教受容とは違う)の発表をしなきゃならんので、夕方から少し、南原の著作を読み直しておりました。南原繁自身が「ちなみに申しますと、私はある人びとのように、宗教を表に出さない。その点はカン…

覚え書:「書評:仏教学者 中村元 植木雅俊・著 学究の生涯と業績描く評伝」、『中外日報』2014年08月08日(金)付。

- 書評 学究の生涯と業績描く評伝 仏教学者 中村元 求道のことばと思想 植木雅俊・著 本書は、人間ブッダに光を当て、ひろく仏教の魅力を伝えた中村元の生涯と業績をたどりながら、その思想の「輪郭」と「核心」を明らかにした評伝だ。 若き日の中村は、哲学…

日記:灯ともる昼の廊下を行きつけて、吉野作造先生この部屋にいましき

- それでは、吉野先生の本質はどこにあるか。ここに「先生とキリスト教」という問題が出て来る。この点は『世界』(一九五五年四月号、一〇〇頁)の座談会の中でもふれられていますが、たしかに、先生は内村鑑三先生とは無関係だった。ただ、吉野先生は本郷…

書評:南原繁研究会編『南原繁と国際政治 永久平和を求めて』エディテックス、2014年。

南原繁研究会編『南原繁と国際政治 永久平和を求めて』エディテックス、読了。昨年11月同研究会第10回シンポジウムの記録。講演を三谷太一郎先生「南原繁と国際政治 学問的立場と現実的立場」、パネル・ディスカッション「南原繁と国際問題をめぐって」…

書評:ブルース・ローレンス(池内恵訳)『コーラン』ポプラ社、2008年。

ブルース・ローレンス(池内恵訳)『コーラン』ポプラ社。イスラームの聖典は一人のアラブ商人が受けた啓示から始まり、長い年月を経て人々に広がり、解釈され強大な信仰となった。その成り立ちと変遷を辿る本書は初学者の最初の一冊に相応しい。巻末に塩野…

書評:本村凌二『愛欲のローマ史 変貌する社会の底流』講談社学術文庫、2014年。

本村凌二『愛欲のローマ史 変貌する社会の底流』講談社学術文庫、読了。ローマ帝国繁栄下、過剰ともいえる欲望と淫靡な乱交が横行したが、その背景にはローマ人のどのような心性が潜んでいたのか。本書は風刺詩人のまなざしを頼りにしながら、性愛と家族をめ…

日記:トマス・アクィナスをよむ意義

月に一度、コロンビア大学コアカリキュラムの教材を取り上げ、雄志で勉強会をしているのですが、5月がアウグスティヌスで、今月がトマス・アクィナス。キリスト教思想史における二大巨人の著作を概観して思うのは、二人とも「紋切り型」のフレーズで、究極…

日記:吉野作造とキリスト教:「人間は神の子にして皆同胞であるとの思想」を生きるということ

- 予は時に自分の生徒の先入主なき直覚的な頭に感ずる思想に、世界的の脈拍が影響して居ることを発見して愕然として密かに自らが一個の型にはまらんとしつゝあるかを驚くことがある。此世界的脈拍の根本義は何であるか、夫れは「人を信ずる」と云ふ点である…

書評:岡田温司『黙示録 イメージの源泉』岩波新書、2014年。

岡田温司『黙示録 イメージの源泉』岩波新書、読了。禍々しいイメージがつきまとう黙示録だが、本来の意味は「秘密のヴェールが剥がれること」。一体、どのような書物なのか。そしてその思想やイメージはどう育まれてきたのか。本書はテクストに忠実に寄り添…

書評:長谷川修一『旧約聖書の謎 隠されたメッセージ』中公新書、2014年。

長谷川修一『旧約聖書の謎 隠されたメッセージ』中公新書、読了。旧約聖書に記された物語は神話として扱われるものもあれば、史実のそれも混在する。本書は7つの物語を取り上げ、その史実性を学問的に検証する。語られるメッセージを読み解き、聖書の豊かな…

書評:小川原正道『日本の戦争と宗教 1899−1945』講談社、2014年。

小川原正道『日本の戦争と宗教 1899−1945』講談社、読了。本書は戦前日本の宗教政策を踏まえた上で、戦争と宗教の関わりについて俯瞰する一冊。キリスト教が公認された1899年から太平洋戦争の終結まで、宗教横断的に、宗教と政治の関わりを明らかにする。仏…

覚え書:「発言 海外から 『南の法王』の影響力=ピエロ・スキアバッツィ」、『毎日新聞』2014年04月16日(水)付。

- 発言 海外から 「南の法王」の影響力 ピエロ・スキアバッツィ ハフィントン・ポスト・バチカン専門記者 ローマ法王が率いるキリスト教カトリックのバチカンは世界的なソフトパワーであり、それが地政学的な力となっている。中国が経済力というハードパワー…

日記:「『大切な遍路道』を朝鮮人の手から守りましょう」こそ、空海の精神、そして仏教の精神、そしてもっといえば、宗教とは全く対極の立場

日本仏教の現状に私は懐疑的であるし、大戦下において一部の密教僧侶のルーズベルト呪詛などというソレは確かに噴飯ものだけど、インドで誕生し、中国・朝鮮半島を経て日本へ伝来した三国仏教史としての日本的展開(文化内開花)を考えるならば、その直因は…

覚え書:「文化 マンショ肖像制作の曲折」、『読売新聞』2014年03月20日(木)付。

- 文化 マンショ肖像制作の曲折(写真キャプション)マンショの肖像画(個人蔵、画像はトリブルツィオ財団提供)。裡面の銘文は「D.Mansio Nipote del Re di Figenge Amb( asciator ) e del Re Fra( nces ) co Bvgnocingva a sva San ( tit ) a」※かっこ内は…

書評:宮崎賢太郎『カクレキリシタンの実像 日本人のキリスト教理解と受容』吉川弘文館、2014年。

宮崎賢太郎『カクレキリシタンの実像 日本人のキリスト教理解と受容』吉川弘文館、読了。第一人者の著者は30年近くに渡る聞き取り調査に基づき、「カクレキリシタン」とは隠れたキリスト者ではなく日本化した土着信仰としてその受容を考察する一冊。 「『…

覚え書:「(世界発2014)キリシタンに脚光 バチカンで法王『弾圧耐え信仰守った』」、『朝日新聞』2014年03月26日(水)付。

- (世界発2014)キリシタンに脚光 バチカンで法王「弾圧耐え信仰守った」 2014年3月26日05時00分(写真キャプション)祈りの言葉「オラショ」を披露する生月島のキリシタンたち=いずれも長崎県平戸市の「島の館」、石田博士撮影 カトリックの総本山バ…

日記:靖国神社で「不戦を誓い、平和の国を誓う」ことは可能なのか?

- 「私はその迫害者に対しても責任を負うている」と述べることで、レヴィナスは、「怨恨」(ルサンチマン)の道徳を覆そうとした。けれども、迫害者に対する責任は無条件な要請ではなかった。「私は私が蒙る迫害に対しても責任を負うている−−、私はある場所…

覚え書:「法王、命がけの財務改革 マフィア反発、報復の恐れも ローマ=石田博士」、『朝日新聞』2014年03月23日(日)付。

- 法王、命がけの財務改革 マフィア反発、報復の恐れも ローマ=石田博士2014年3月23日11時38分(写真・図版)ローマの教会で21日、マフィア犯罪の被害者遺族らと面会したフランシスコ法王(右端)=AP ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は21…

覚え書:「貧者の教会」(上)(中)(下)、『毎日新聞』2014年03月20日(木)〜22日(土)付。

- 貧者の教会:法王就任1年/上 伝統捨てて「南」へ 増す影響力、首脳の訪問続々 毎日新聞 2014年03月20日 東京朝刊(写真キャプション)執務室の窓に姿を見せた法王を写真に撮るフィリピン人女性信徒=バチカンのサンピエトロ広場で2014年3月9日、福…

書評:山田晶『アウグスティヌス講話』講談社学術文庫、1995年。

山田晶『アウグスティヌス講話』講談社学術文庫、1995年、読了。筆者が北白川教会でアウグスティヌスについて「打解けた気分」で縦横に語った六話をまとめた一冊。1、アウグスティヌスと女性、2、煉獄と地獄、3、ペルソナとペルソナ性、4、創造と悪、5…

日記:学者、思想家のガウンを著けた大親分

- もちろん、思想と生活とは不可分のものであるといふこともいへるだらう。思想だけのものがその実生活に現はれ、又、実生活だけのものが、思想に現はれると、かやうにいふことも出来るだらう。しかし、僕は考へる。先生の場合に於いては、大正五年頃から『…

日記:「全国のホテルに古事記を置こう!」プロジェクトのいかがわしさについて……

竹田研究財団が『古事記』編纂1300年を記念して「全国のホテルに古事記を置こう!」プロジェクトを立ち上げたそうですが、少しだけコメンタリーを残しておこうと思います。同webによると概要は次の通り。 - 一般財団法人竹田研究財団 『古事記』編纂1300年記…

日記:人間を「無効化」しようとする仮象にすぎないマモンへの永続的な抵抗

- 貧困で、無智で、社会情勢に暗い日本の農夫が田畑から引き離され、仏教の本義を教えられることはなく、偶像に犠牲を強いられることを教えられている。一方、ロシアのツーラ地方もしくはニジニ・ノブゴロド地方の貧困で無教養な人々が、キリスト教の本義は…

日記:民本主義のアクチュアリティ

- すなわち、大逆事件以来、「我国でアナーキズムと云へば直ちに飛んでもない大それた事を計画する反逆人のやうに思ひ做さるるを常とする」が、そういう「破壊の為に破壊を事とする」ような「消極的アナーキズム」以来に「積極的アナーキズム」といえるもの…

日記:有機的知識人としての吉野作造

- 知ることから理解することへの移行 知ることから理解すること、感じることへの移行、あるいはその逆に感じることから理解すること、知ることへの移行。民衆的分子は「感じる」ことはあっても、つねに理解し、知るとはかぎらない。また知識人分子は「知る」…

覚え書:「ローマ法王:長崎キリシタンは「模範」 潜伏し信仰死守、称賛」、『毎日新聞』2014年01月17日(金)付。

- ローマ法王:長崎キリシタンは「模範」 潜伏し信仰死守、称賛 毎日新聞 2014年01月17日 東京朝刊一般謁見に現れたフランシスコ・ローマ法王=バチカンのサンピエトロ広場で15日、AP 【ローマ福島良典】世界のキリスト教カトリック信徒約12億人の頂点…