学問論

日記:吉野作造や南原繁を学ぶアクチュアリティについて一言

先日、宮城県大崎市の吉野作造記念館で講演した折り、聴講してくださった「『吉野作造通信』を発行する会」の永澤さんから、最新の『吉野作造通信』(15号)を頂き、ようやく眼を通しました。遅くなりましたがありがとうございました。デモクラシーの旗手…

覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 進取の精神と柔軟さを=湯浅誠」、『毎日新聞』2014年04月16日(水)付。

- くらしの明日 私の社会保障論 進取の精神と柔軟さを 人財開発の必須事項湯浅誠 社会活動家 4月から法政大学の教授に就任した。所属は現代福祉学部。 法政大は「自由と進歩」、現代福祉学部は「Well-Being(健康で幸せな暮らし)の実現」を理念に掲げる。…

書評:金成隆一『ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃』岩波書店、2013年、+ 「ムーク続々、日本の大学も 講義を無料ネット配信」、『朝日新聞』2014年03月21日(金)付。

金成隆一『ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃』岩波書店、2013年、読了。Massive Open Online Courseとは無料公開のオンライン講座の意。本書は、創設から利用者まで、現場取材でその現在をまとめたルポルタージュ。 ルポ MOOC革命 - 岩波書店名門…

日記:2013年度卒業式:最小限の変革共同体としての学友関係

- 「では、つぎにわれわれが探求して示さなければならないのは、思うに、現在もろもろの国において、われわれが述べたような統治のあり方を妨げている欠陥はそもそも何であるか、そして、ある国がそのような国制のあり方へと移行することを可能ならしめるよ…

覚え書:「『反知性主義』への警鐘 相次ぐ政治的問題発言で議論」、『朝日新聞』2014年02月19日(水)付。

- 「反知性主義」への警鐘 相次ぐ政治的問題発言で議論 2014年2月19日 「反知性主義」という言葉を使った評論が論壇で目につく。「非」知性でも「無」知でもなく「反」知性――。政治的な問題発言が続出する現状を分析・批判しようとする意図が見える。■自分に…

書評:大塚ひかり『本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人』新潮社、2014年。

大塚ひかり『本当はひどかった昔の日本』新潮社、読了。「昔は良かった」と誰もが言うが、本当に昔の日本は良かったのか。本書は古典を材料にその内実をユーモアに検証する。「古典ってワイドショーだったんですね!」(帯)。昔は良かったwとは大嘘。 『源…

日記:智慧とは「人間をして、瞬間による支配から離脱せしめるもの」

- 智慧というもののもつ最も重要な要素は、それこそが、人間をして、瞬間による支配から離脱せしめるものだ、ということである。それ故に、智慧は、時代に適うものではないのである。智慧の意図することは、人間をあらゆる運命の打撃に対して直ちに確乎たる…

書評:ロナルド・H・フリッツェ(尾澤和幸訳)『捏造される歴史』原書房、2012年。

ロナルド・H・フリッツェ『捏造される歴史』原書房、読了。「アトランティス大陸」から「天地創造説のなかの人種差別」まで−−。本書はアメリカにおける疑似歴史、疑似科学隆盛の歴史と現在、そしてその受容心象を明らかにする一冊。 疑似科学的なるものを荒…

書評:子安宣邦『思想史家が読む論語 「学び」の復権』岩波書店、2010年。

子安宣邦『思想史家が読む論語 「学び」の復権』岩波書店、読了。「論語」ほど注解の多い書物はあるまい。しかし、オリジナルとコピーの豊穣さが読み手を幻惑してしまう。本書は、思想史を踏まえた上で、「読む」意義を一新する一冊。本書を読むうちに「論語…

書評:小林秀雄『読書について』中央公論新社、2013年。

小林秀雄『読書について』中央公論新社、読了。「読書の最初の技術は、どれこれの別なく貪る様に読む事で養われる他はない」。表題エッセーをはじめ、「読む」ことと「書く」ことにテーマ絞ったアンソロジー。巻末には対談「教養ということ」(田中美知太郎…

書評:三谷太一郎『学問は現実にいかに関わるか』東京大学出版会、2013年。

- 政治学教育は単なる専門性、または単なる一般性をもつものではない。専門性を媒介とする一般性、または一般性を媒介とする専門性をもつのであって、それが政治学教育の総合性でえある。したがって大学院における政治教育はスペシャリストというよりも、む…

日記:「今読んでいるんです」とはなかなか言えず「今読み返しているのですが」……

(twのまとめですが……)先週の続きで、今日も文学について少々お話をしました。『カラマーゾフの兄弟』における「人類」の議論から、社会実践としてのスピヴァクの可能性へ示唆を飛ばし、世界文学を読むケーススタディとしてゲーテを参照しました。我ながら…

覚え書:「みんなの広場 異なる考え受け入れる社会を」、『毎日新聞』2013年10月30日(水)付。

- みんなの広場 異なる考え受け入れる社会を 大学名誉教授 72(大分市) 大学入試改革がまた行われようとしている。ペーパーテスト重視の入試を改革することが教育を替える突破口になる可能性を否定するものではない。しかし、日本の教育で根本的な問題は、“…

覚え書:「引用句辞典 トレンド編 [大学入制度改革]=鹿島茂」、『毎日新聞』2013年10月26日(土)付。

- 引用句辞典 トレンド編 鹿島茂[大学入試制度改革] 教育の本質はエロス 文科省には無理な話ソクラテスよ、人間はみな、子を宿している。これは体の場合でもあっても、心の場合であっても、同様にいえることだ。そして、時が満ちると、子をなしたくなる。…

日記:2013年度パピルス賞:植木雅俊訳註『梵漢和対照・現代語訳 維摩経』岩波書店。

「制度としてのアカデミズムの外で達成された学問的業績」や「科学ジャーナリストによる業績」を顕彰する「パピルス賞」に、植木雅俊訳註『梵漢和対照・現代語訳 維摩経』(岩波書店)が選ばれたとのこと。昨日十日は中村元博士のご命日。中村先生の最晩年の…

書評:北川達夫・平田オリザ『ニッポンには対話がない』三省堂、2008年。

- 北川 相手の見解があって自分の見解がある、それが対立する、対立するとお互いが変わってくる。まさに、その変わってくるところを楽しめるか、そこを重視できるかですよね。回避をせずに、対立を恐れないでぶつかって、そのうえでお互いにどう変われるか、…

日記:「哲学には答えがない」わけではなく

哲学の授業をしていると、「哲学には答えがない」ですね、という反応がよくあります。たしかに、これまで義務教育で学習したような意義での「答えがない」のかもしれませんが、厳密には「答えがない」わけではありません。このあたりは最初に断るようにして…

日記:人生や仕事での主要な関心は、当初のわれわれとは異なる人間になることです。

- −− あなたは、ごく頻繁に「哲学者」、のみならず、「歴史家」、「構造主義者」、「マルクス主義者」と呼ばれています。コレージュ・ド・フランスにおけるあなたの担当講座の肩書は、「思想体系の歴史の教授」です。このことの意味は何でしょう? わたしが…

覚え書:「進化するアカデミア―「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来 [著]江渡浩一郎・ニコニコ学会β実行委員会 [評者]川端裕人」、『朝日新聞』2013年07月21日(日)付。

- 進化するアカデミア―「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来 [著]江渡浩一郎・ニコニコ学会β実行委員会 [評者]川端裕人(作家) [掲載]2013年07月21日 [ジャンル]文芸 政治 ■学会ネット中継、視聴者も参加 研究者が集う学会は創造性を加速させる場として古…

社会を批判的にまなざす「力」

金曜日の授業にて、哲学の講座は残り1回になりました。最初の授業から口をすっぱく言っているのですが、本来、大学での学問、なかんずく教養教育とは、例えばそれが外国語を学習するものであったとしても、何かそれは社会の要請に応えるという名の馴化とし…

書評:鳥居龍蔵『ある老学徒の手記』岩波文庫、2013年。

鳥居龍蔵『ある老学徒の手記』岩波文庫、読了。本書は小学校中退で国際的に活躍した東京帝大助教授(人類学)の自伝、1953年朝日新聞社刊行の初の文庫収録。生涯の概要は以下に詳しい(徳島県立鳥居龍蔵記念館) → http://www.torii-museum.tokushima-ec.ed.…

覚え書:「みんなの広場 『過ち繰り返さぬ』歴史の大切さ」、『毎日新聞』2013年06月01日(土)付。

- みんなの広場 「過ち繰り返さぬ」歴史の大切さ 中学生 14(西東京市) 今年は、歴史を教わる先生が去年と代わりました。去年はずっと「どうして歴史を覚えなくちゃいけないの?」と思っており、過去のことを細々と教えられても将来なんの役にもたたないと…

覚え書:「みんなの広場 本当にグローバルな人材とは」、『毎日新聞』2013年05月26日(日)付。

- みんなの広場 本当にグローバルな人材とは 大学生 21(千葉市美浜区) 最近「グローバル人材」という言葉をよく耳にする。特に就職活動を控えた大学生はこの言葉に敏感だ。「グローバル人材になるためにはまずは語学力。そのために英語を勉強しよう」と考…

書評:平田オリザ『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』講談社現代新書、2012年。

- 平田オリザ『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』講談社現代新書、読了。演劇人の著者よる新しいコミュニケーション論、教育の現場に関わるなかで、ハウツー教育と社会の要求のダブルバインドを踏まえた上で、何が「表現」(コミュニ…

覚え書:「今週の本棚:堀江敏幸・評 『S先生のこと』=尾崎俊介・著」、『毎日新聞』2013年05月12日(日)付。

- 今週の本棚:堀江敏幸・評 『S先生のこと』=尾崎俊介・著 毎日新聞 2013年05月12日 東京朝刊 (新宿書房・2520円) ◇悲しみと悔悟を映す“翻訳者の声”を慕って 学生の頃、脈絡なく読んで引き込まれた数冊のアメリカ現代文学の翻訳書を通して、私はその…

覚え書:「【自著を語る】『思想としての「医学概論」 いま「いのち」とどう向き合うか』 高草木光一さん(慶応義塾大学経済学部教授)」、『東京新聞』2013年4月23日(火)付。

- 【自著を語る】『思想としての「医学概論」 いま「いのち」とどう向き合うか』 高草木光一さん(慶応義塾大学経済学部教授)2013年4月23日 ◆先端技術に陥穽ないか 私は、経済学部専門課程で「社会思想」を担当している。「医学概論」をそんな門外漢がつく…

「話さない」ことも、そして「いない」ということさえ表現かもしれない

- さて、「今朝、何、話したの?」と聞くと、子どもたちは、ほぼ決まって「えぇ、今朝、何話したっけ?」と呟く。私はこれだけでも、この授業(国語授業内での演劇教室のこと……引用者註)の意味があると考えている。話し言葉の教育とは、まずもって、自分の…

覚え書:「みんなの広場 優れた師と出会いたい」、『毎日新聞』2013年04月25日(木)付。

- みんなの広場 優れた師と出会いたい 大学生 21(東京都調布市) 時代錯誤かもしれないが、私は今、師弟関係というものに憧れる。家庭でもなく、友人でもなく、先輩後輩の関係でもない。優れた人物から教えを受け、その考えに共感し、時には疑問をもち、そ…

覚え書:「今週の本棚:古典を失った大学 近代性の危機と教養の行方=藤本夕衣・著」、『毎日新聞』2013年04月21日(日)付。

- 今週の本棚:古典を失った大学 近代性の危機と教養の行方 藤本夕衣・著 (NTT出版・3990円) かつては世間離れした場として容認されていた大学にも、「改革」の波が打ち寄せる。予算の効率配分、多様なニーズへの対応、キャリア教育等。東大でも、…

書評:西垣通『集合知とは何か ネット時代の「知」のゆくえ』中公新書、2013年。

西垣通『集合知とは何か ネット時代の「知」のゆくえ』中公新書、読了。ここ10数年のコンピュータの変化とは、人間に代わっての高速な処理から相互通信性にシフトしつつあることだ。本書は「〜2.0」のフレーズに代表されるインターネットを初めとする「…