戦争・暴力

書評:エルンスト・ヴァイス(瀬野文教訳)『目撃者』草思社、2013年。

- エルンスト・ヴァイス(瀬野文教訳)『目撃者』草思社、2013年、読了。日本ではなじみが薄いが20世紀ドイツ文学に最重要の位置を占めるヴァイス、待望の邦訳。モラビア出身のユダヤ人精神科医にしてカフカの友人は、ナチズム勃興期の市民生活の息吹を「…

覚え書:「時流・底流:市民が発掘、満蒙開拓史 誤った国策、悲劇と向き合い」、『毎日新聞』2014年02月10日(月)付。

- 時流底流 [市民が発掘 満蒙開拓史] 誤った国策 悲劇と向き合い(写真キャプション)「東京満蒙開拓団」をまとめた(右から)藤村妙子さん、今井英男さん(故人)、多田鉄男さん=東京都大田区で12年11月 戦前、戦中に約27万人が旧満州(現中国東北…

書評:駒井洋監修、小林真生編『移民・ディアスポラ研究3 レイシズムと外国人嫌悪』明石書店、2013年。

駒井洋監修、小林真生編『移民・ディアスポラ研究3 レイシズムと外国人嫌悪』明石書店、読了。官民あげて高まる拝外主義とヘイトスピーチだが、その台頭に対する日本社会の認識も対応も著しく遅れている。本書は「レイシズムと外国人嫌悪」の実態を露わにし…

書評:ロバート・イーグルストン(田尻芳樹、太田晋訳)『ホロコーストとポストモダン 歴史・文学・哲学はどう応答したか』みすず書房、2013年。

ロバート・イーグルストン『ホロコーストとポストモダン 歴史・文学・哲学はどう応答したか』みすず書房、読了。アドルノを引くまでもなくホロコーストは歴史・文学・哲学」を一変させた。その証言やテクストと論争、それをどのように「読む」のか。本書は、…

書評:安田敏朗『かれらの日本語 台湾「残留」日本語論』人文書院、2011年。

安田敏朗『かれらの日本語 台湾「残留」日本語論』人文書院、読了。植民地支配下の台湾における国語政策(日本語教育)の実態を明らかにすることで、しばしば郷愁を持って語られる“親日”国台湾の日本語受容の歪んだ歴史を本書は厳格に指摘する。「同化」「皇…

書評:野村真理『隣人が敵国人になる日 第一次世界大戦と東中欧の諸民族』人文書院、2013年。

野村真理『隣人が敵国人になる日 第一次世界大戦と東中欧の諸民族』人文書院、読了。一次大戦とは、独仏の直接対決と戦後の民族自決の印象から、帝国から国民国家へ歴史に見えるが、そう単純ではない。帰属意識も疎らな多民族混淆地域の東部戦線では「隣人が…

覚え書:「ひと:メアリー・アン・ライトさん=9条堅持を訴える元米陸軍大佐」、『毎日新聞』2013年11月13日(水)付。

- ひと:メアリー・アン・ライトさん=9条堅持を訴える元米陸軍大佐 毎日新聞 2013年11月13日 東京朝刊 ◇メアリー・アン・ライト(Mary Ann Wright)さん(67) 「悲しいことだが、現在の日本は軍国主義への坂道を滑り落ちている」。このほど…

書評:マーク・ユルゲンスマイヤー(立山良司監修、古賀林幸、櫻井元雄訳)『グローバル時代の宗教とテロリズム いま、なぜ神の名で人の命が奪われるのか』明石書店、2003年。

マーク・ユルゲンスマイヤー『グローバル時代の宗教とテロリズム いま、なぜ神の名で人の命が奪われるのか』明石書店、読了。宗教は本来、暴力に終止符を打ち、平和と秩序をもたらすものだが、「平和」を実現するために戦っているのが宗教の歴史。本書は、宗…

覚え書:「みんなの広場 満蒙開拓義勇軍と夫の思い出」、『毎日新聞』2013年09月16日(月)付。

- みんなの広場 満蒙開拓義勇軍と夫の思い出 無職 90(広島県福山市) 満蒙開拓に特化した記念館が、全国最多の開拓団員を送り出した長野県の阿智村に開設されていることを新聞記事で知りました。 今年95歳で他界した夫は教職を40年務めました。戦時中、満蒙…

書評:ジャン・ブリクモン(菊地昌実訳)『人道的帝国主義 民主国家アメリカの偽善と反戦平和運動の実像』新評論、2011年。

ジャン・ブリクモン『人道的帝国主義 民主国家アメリカの偽善と反戦平和運動の実像』新評論、読了。戦争の歴史とはあらゆる美徳を動員する正当化の歴史といってよいが、その急先鋒を邁進するのが米国の人道的帝国主義。人道的と帝国主義とはそもそも相反する…

覚え書:「今週の本棚:湯川豊・評 『真珠湾収容所の捕虜たち』=オーテス・ケーリ著」、『毎日新聞』2013年07月28日(日)付。

- 今週の本棚:湯川豊・評 『真珠湾収容所の捕虜たち』=オーテス・ケーリ著 毎日新聞 2013年07月28日 東京朝刊 (ちくま学芸文庫・1470円) ◇米情報将校が捉えた“捕虜である友人”の群像 一九四二年に米海軍日本語学校に入学、一年後、海軍少尉としてハワ…

覚え書:「書評:アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること [著]ネイサン・イングランダー [評者]小野正嗣」、『朝日新聞』2013年06月02日(日)付。

- アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること [著]ネイサン・イングランダー [評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授) [掲載]2013年06月02日 [ジャンル]文芸 人文 ■生還者は「人間的」になったのか 艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉にす。だが…

書評:R・E・ルーベンスタイン『殺す理由 なぜアメリカ人は戦争を選ぶのか』紀伊國屋書店、2013年。

- 別の言い方をするなら、戦争は通常アメリカ国民に対して、この市民宗教の諸原理によって−−要求されないまでも−−正当化されるものとして売りこまれるということだ。社会学者のロバート・N・ベラー〔一九二三生〕によれば、市民宗教とはものの見方や信念や…

覚え書:「書評:平和主義とは何か 政治哲学で考える戦争と平和 [著]松元雅和 [評者]萱野稔人」、『朝日新聞』2013年05月26日(日)付。

- 平和主義とは何か 政治哲学で考える戦争と平和 [著]松元雅和 [評者]萱野稔人(津田塾大学准教授・哲学) [掲載]2013年05月26日 [ジャンル]政治 社会 ■武力行使を考え抜く道筋示す 改憲論議が再び活発化している。その根幹にはもちろん、憲法が掲げる平和主義…

覚え書:「書評:隣人が殺人者に変わる時 [著]ジャン・ハッツフェルド/ゆるしへの道 [著]イマキュレー・イリバギザ、スティーヴ・アーウィン [評者]渡辺靖」、『朝日新聞』2013年05月26日(日)付。

- 隣人が殺人者に変わる時 [著]ジャン・ハッツフェルド/ゆるしへの道 [著]イマキュレー・イリバギザ、スティーヴ・アーウィン [評者]渡辺靖(慶応大学教授・文化人類学) [掲載]2013年05月26日 [ジャンル]ノンフィクション・評伝 国際 ■ルワンダの悲劇、目を…

覚え書:「書評:黒澤明の十字架 戦争と円谷特撮と徴兵忌避 [著]指田文夫 [評者]出久根達郎」、『朝日新聞』2013年05月19日(日)付。

- 黒澤明の十字架 戦争と円谷特撮と徴兵忌避 [著]指田文夫 [評者]出久根達郎(作家) [掲載]2013年05月19日 [ジャンル]アート・ファッション・芸能 ■偉丈夫はなぜ徴兵されなかった 映画監督の黒澤明は壮健な偉丈夫だったが、徴兵体験はない。軍務経験もゼロで…

書評:倉沢愛子『資源の戦争 −−「大東亜共栄圏」の人流・物流』岩波書店、2012年。

- 日本軍の東南アジア占領の最大の目的は燃料、食料、鉄鉱石など戦争継続に必要な「重要国防資源」の獲得にあったことは、本書のなかで再三強調してきた。獲得したものは、現地自活のほかに、「大東亜共栄圏」内の物流に回すこと、日本へ搬送することが重要…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『兵士たちがみた日露戦争』=横山篤夫、西川寿勝・編著」、『毎日新聞』2013年05月19日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『兵士たちがみた日露戦争』=横山篤夫、西川寿勝・編著 毎日新聞 2013年05月19日 東京朝刊 (雄山閣・2730円) 副題「従軍日記の新資料が語る坂の上の雲」に本書の狙いが現れている。大日本帝国が帝政ロシアを破った日露戦争では、…

書評:飯倉章『黄禍論と日本人 欧米は何を嘲笑し、恐れたのか』中公新書、2013年。

- 他に西洋列強諸国が勝利の要因として注目したのは、日本の愛国主義である。そのお様子を如実に示しているのが『パンチ』に載った「愛国心のレッスン」〔図6−19〕だ。日本の軍事的成功に、ジョンブルが「あなたの軍制度はみごとに機能しているように思われ…

書評:原田敬一『兵士はどこへ行った 軍用墓地と国民国家』有志舎、2013年。

原田敬一『兵士はどこへ行った 軍用墓地と国民国家』有志舎、読了。国民を創造する国家は「死」を記念・管理せざるを得ない。本書は緻密な実証と丹念なフィールドワーク、そして国際比較のを通して、戦死者の追悼・慰霊・顕彰・記念を検証、著者の広範な取材…

覚え書:「書評:黄禍論と日本人 飯倉章著」、『東京新聞』2013年5月5日(日)付。

- 黄禍論と日本人 飯倉章 著 2013年5月5日 [評者] 成田龍一 日本女子大教授。著書『近現代日本史と歴史学』など。 ◆風刺画を丹念に解読 「黄禍論」とは、白人たちが「黄色人種」の脅威を説くもので、ドイツ皇帝ヴィルヘルム二世−カイザーが十九世紀末に唱…

書評:井上寿一『政友会と民政党 戦前の二大政党制に何を学ぶか』中公新書、2012年。

- 歴史の教訓 以上の戦前政党政治の歴史から何を学ぶべきか、三点にまとめ直してみる。 第一に、二大政党制よりも連立政権の重要性である。戦前の日本政治は、二大政党制の限界を克服するために、新しい政党間提携を模索した。同様に今の日本政治も、二大政…

書評:山田邦男『フランクルとの〈対話〉 苦境を生きる哲学』春秋社、2013年。

山田邦男『フランクルとの〈対話〉 苦境を生きる哲学』春秋社、読了。NHK・Eテレ「こころの時代」の放送を元に、名著『夜と霧』で有名なヴィクトール・E・フランクルを読み直す最新の入門書。震災以降注目を浴びるフランクルは「今、何を語りえるのか」…

覚え書:「書評:二・二六事件の幻影―戦後大衆文化とファシズムへの欲望 [著]福間良明」、『朝日新聞』2013年04月07日(日)付。

- 二・二六事件の幻影―戦後大衆文化とファシズムへの欲望 [著]福間良明 [掲載]2013年04月07日 [ジャンル]歴史 ノンフィクション・評伝 「昭和維新」を掲げた二・二六事件が戦後、映画や小説でどう描かれてきたか。 戦後しばらくは、言論統制の影響もあって、…

覚え書:「みんなの広場 指導での罵声や暴力やめて」、『毎日新聞』2013年04月03日(水)付。

- みんなの広場 指導での罵声や暴力やめて 主婦 72(福岡市東区) 近所にある2カ所の公園では、土日は朝から小学生がそろいのユニホームで、野球やサッカーに余念がない。子供たちの頑張る姿が可愛いくて、買い物途中にそばを通ると時々足を止めて見学する…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『ポツダム宣言と軍国日本』=古川隆久・著」、『毎日新聞』2013年03月31日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『ポツダム宣言と軍国日本』=古川隆久・著 毎日新聞 2013年03月31日 東京朝刊 (吉川弘文館・2730円) 「敗者の日本史」シリーズ(全20巻)の一冊。1945年の敗戦で、大日本帝国は崩壊した。なぜ、あのような愚かな戦争に行き…

老人に用なし死ねといふかこの冬

- 老人に用なし死ねといふかこの冬 堀内竹嶺(『愛吟』一九四〇年四月号) 老人は足手まといになるだけでなんの役にも立たないというのが戦争である。同時に、子どもは邪魔扱いされるはずだが、百年戦争であるかぎり、やがて兵士になる彼らは大切な「人的資…

覚え書:「今週の本棚:加藤陽子・評 『記念碑に刻まれたドイツ』=松本彰・著」、『毎日新聞』2013年03月03日(日)付。

- 今週の本棚:加藤陽子・評 『記念碑に刻まれたドイツ』=松本彰・著毎日新聞 2013年03月03日 東京朝刊 (東京大学出版会・6720円) ◇民族の存亡をかけた歴史の変転を問い直す 葉かげから少しだけ陽(ひ)のさしている森をゆっくりと歩く人−−。本書を読…

覚え書:「異論反論 安倍首相が沖縄を訪問しました=佐藤優」、『毎日新聞』2013年02月20日(水)付。

- 異論反論 安倍首相が沖縄を訪問しました 寄稿 佐藤優「沖縄の主権」直ちに認めよ 2日、安倍晋三首相が日帰りで沖縄を訪問し、仲井真弘多県知事と会談した。報道から判断すると、MV22オスプレイの沖縄配備強行問題、米開閉隊普天間飛行場の辺野古(同…

覚え書:「みんなの広場 今も忘れない鉄拳制裁の恐怖」、『毎日新聞』2013年02月16日(土)付。

- みんなの広場 今も忘れない鉄拳制裁の恐怖 自営業 67(大分県佐伯市) 50年以上前の中学生の頃の出来事が、今も忘れられずに心に残っている。男子の簿記を担当していた男性教師は、生徒の一人でも態度が悪かったり口答えをしたりすると、全員を並ばせて…