全体主義・ファシズム・総動員

書評:ボリス・シリュルニク(林昌宏訳)『憎むのでもなく、許すのでもなく ユダヤ人一斉検挙の夜』吉田書店、2014年。

ボリス・シリュルニク(林昌宏訳)『憎むのでもなく、許すのでもなく ユダヤ人一斉検挙の夜』吉田書店、読了。6歳の時、占領下のフランスでナチに逮捕されたが、逃亡し、後に苦労して精神科医となった著者が自らの人生から導き出した教訓が本書の邦題だ。こ…

覚え書:「集団的自衛権:閣議決定 全国紙の論調二分、大半の地方紙は批判」、『毎日新聞』2014年07月21日(月)付。

- 集団的自衛権:閣議決定 全国紙の論調二分、大半の地方紙は批判 毎日新聞 2014年07月21日 東京朝刊 従来の政府見解を転換して、安倍晋三政権が今月1日、集団的自衛権が使えるように憲法解釈を変更する閣議決定をしたことを受けて、全国の新聞は翌日紙面の…

覚え書:「特集ワイド:集団的自衛権 五野井郁夫・高千穂大准教授と見た首相の国会答弁」、『毎日新聞』2014年07月16日(水)付、夕刊。

- 特集ワイド:集団的自衛権 五野井郁夫・高千穂大准教授と見た首相の国会答弁 毎日新聞 2014年07月16日 東京夕刊(写真キャプション)衆院予算委員会の開会を待つ五野井郁夫・高千穂大准教授。「国家の大きな方針転換をするのですから、安倍首相はその場しの…

書評:杉浦敏子『ハンナ・アーレント入門』藤原書店、2002年。

杉浦敏子『ハンナ・アーレント入門』藤原書店、読了。公共性の復権、政治的なるものの再興、複数性(多様性)の擁護、労働の再考をキーワードに、アーレントの思想を現代に蘇らせる入門。思索を辿るだけでなく、彼女の思索が現代の課題にどのように応答する…

覚え書:「『ハンナ・アーレント』 矢野久美子著 宇野重規(政治学者・東京大教授)・評」、『読売新聞』2014年05月04日(日)付。

- ・宇野重規(政治学者・東京大教授) 『ハンナ・アーレント』 矢野久美子著誠実な政治哲学者の生涯 ハンナ・アーレントというと、全体主義やら革命を論じた、ちょっと怖そうな政治哲学者というイメージがあるかもしれない。ところが、日本でも話題になった…

覚え書:わたしたちは、いい人だと言われただけで安心していられない

- SNさんがドイツに行く決心をした時、ドイツ人は日本人よりもっとひどいから行くな」と言って家族は猛反対したそうだ。隣にすわっていたドイツ人の夫が笑いながらうなずいている。「韓国では日本人の悪口をいつも聞いていたが、ドイツに来てから出会った…

覚え書:「発言 海外から 『謝罪の時代』直視せよ=キャロル・グラック」、『毎日新聞』2014年04月09日(水)付。

- 発言 海外から 「謝罪の時代」直視せよ キャロル・グラック コロンビア大学教授(日本近現代史) 歴史問題、特に20世紀に起きた問題を今も抱えるのは日本だけではない。国際社会には、国家が過去とどう向き合うかについての規範がある。第二次大戦後に発…

書評:ワシーリー・グロスマン(齋藤紘一訳、亀山郁夫解説)『万物は流転する』みすず書房、2013年。

ワシーリー・グロスマン(齋藤紘一訳、亀山郁夫解説)『万物は流転する』みすず書房、2013年、読了。「自由であるということは本当に恐ろしいことだ」。帝政から近代国家へ。形式は変われどもロシアの内実は変わらない。個人の徹底的な抑圧と民衆が国家と支…

日記:表現の自由を隠れ蓑にする和製フライコール

- 傷害:外国人排斥反対と勘違い、模造刀で切りつけ 川崎 毎日新聞 2014年03月04日 19時36分(最終更新 03月04日 20時55分) 神奈川県警公安2課などは3日、模造刀で男性を切りつけ軽傷を負わせたとして、東京都台東区の無職の男(32)を傷害容疑で逮捕し…

書評:木下直之『戦争という見世物 日清戦争祝捷大会潜入記 』ミネルヴァ書房、2013年。

木下直之『戦争という見世物 日清戦争祝捷大会潜入記』ミネルヴァ書房、2013年、読了。日清戦争に勝利し、日本中が沸いた明治二七年一二月九日に開催された日清戦争祝捷大会に美術史家の著者が潜入し、その情景を実況したのが本書。SFチックな構えとは裏腹…

日記:中山成彬大先生と片山さつき大先生の「狂気」扇動

- 「アンネの日記」やその関連図書のページが大量に破られるという被害が昨年から今年にかけ、東京都内の公立図書館で相次いでいる。被害は少なくとも250冊以上になるとみられ、範囲も23区だけでなく市部にも及ぶ。 「アンネの日記」は第二次世界大戦中にオ…

書評:エルンスト・ヴァイス(瀬野文教訳)『目撃者』草思社、2013年。

- エルンスト・ヴァイス(瀬野文教訳)『目撃者』草思社、2013年、読了。日本ではなじみが薄いが20世紀ドイツ文学に最重要の位置を占めるヴァイス、待望の邦訳。モラビア出身のユダヤ人精神科医にしてカフカの友人は、ナチズム勃興期の市民生活の息吹を「…

覚え書:「記者の目:英国という監視社会=小倉孝保(欧州総局・ロンドン)」、『毎日新聞』2014年02月14日(金)付。

- 記者の目:英国という監視社会=小倉孝保(欧州総局・ロンドン) 毎日新聞 2014年02月14日 東京朝刊(写真キャプション)記念館になっている旧政府暗号学校。暗号解読に使用された機器が展示されている=英ブレッチェリーで2014年2月4日午前10時、…

覚え書:「時流・底流:市民が発掘、満蒙開拓史 誤った国策、悲劇と向き合い」、『毎日新聞』2014年02月10日(月)付。

- 時流底流 [市民が発掘 満蒙開拓史] 誤った国策 悲劇と向き合い(写真キャプション)「東京満蒙開拓団」をまとめた(右から)藤村妙子さん、今井英男さん(故人)、多田鉄男さん=東京都大田区で12年11月 戦前、戦中に約27万人が旧満州(現中国東北…

日記:戦時下の国民は、軍部に強制されて戦争に協力するほかなかったのか。そうではなかった。

- 戦時下の国民は、軍部に強制されて戦争に協力するほかなかったのか。そうではなかった。それが証拠に斉藤は、二年後の翼賛選挙において、非推薦の候補ながら、兵庫五区からトップ当選を果たしている。斉藤は軍部の政治介入よりも政党の「無気力」をより強…

覚え書:「特定秘密保護法に言いたい:報道の自由、読者と共に守れ−−ジャーナリスト・むのたけじさん」、『毎日新聞』2014年01月23日(木)付。

- 特定秘密保護法に言いたい:報道の自由、読者と共に守れ−−ジャーナリスト・むのたけじさん 毎日新聞 2014年01月23日 東京朝刊(写真キャプション)ジャーナリスト・むのたけじ氏=東京・内幸町の日本記者クラブで1月14日、臺宏士撮影 ◇むのたけじさん(…

書評:ロバート・イーグルストン(田尻芳樹、太田晋訳)『ホロコーストとポストモダン 歴史・文学・哲学はどう応答したか』みすず書房、2013年。

ロバート・イーグルストン『ホロコーストとポストモダン 歴史・文学・哲学はどう応答したか』みすず書房、読了。アドルノを引くまでもなくホロコーストは歴史・文学・哲学」を一変させた。その証言やテクストと論争、それをどのように「読む」のか。本書は、…

覚え書:「『不戦の誓い』場所が違う 程永華・駐日中国大使が寄稿」、『毎日新聞』2013年12月30日(月)付。

- 「不戦の誓い」場所が違う 程永華・駐日中国大使が寄稿 安倍晋三首相の靖国神社参拝について、中国の程永華駐日大使が毎日新聞に寄稿し、「不戦の誓い」をする場を間違えていると厳しく批判した。 日本を代表する政府の指導者が第二次世界大戦のA級戦犯も…

覚え書:「みんなの広場 『スパイの親』悲劇繰り返すな」、『毎日新聞』2013年11月20日(水)付。

- みんなの広場 「スパイの親」悲劇繰り返すな 無職 81(千葉市若葉区) 72年前の12月8日、太平洋戦争開戦の日、北海道帝国大生の宮沢弘幸さんは「軍機保護法」違反で特高警察に検挙された。宮沢さんは拷問を受けながらも「やっていない」と叫び続けた。 根…

覚え書:「みんなの広場 満蒙開拓義勇軍と夫の思い出」、『毎日新聞』2013年09月16日(月)付。

- みんなの広場 満蒙開拓義勇軍と夫の思い出 無職 90(広島県福山市) 満蒙開拓に特化した記念館が、全国最多の開拓団員を送り出した長野県の阿智村に開設されていることを新聞記事で知りました。 今年95歳で他界した夫は教職を40年務めました。戦時中、満蒙…

覚え書:「みんなの広場 麻生氏、発言撤回ではすまない」、『毎日新聞』2013年08月08日(木)付。

- みんなの広場 麻生氏、発言撤回ではすまない 翻訳業 62(東京都品川区) 「ナチス・ドイツの手口を学んだらどうか」という耳を疑う発言をして、さっそく国際的非難を浴びた麻生太郎副総理が発言を撤回した。 この種の暴言の常として、撤回の弁明を真意と異…

書評:小林清美『アウトバーンとナチズム 景観エコロジーの誕生』ミネルヴァ書房2013年。

小林清美『アウトバーンとナチズム 景観エコロジーの誕生』ミネルヴァ書房、読了。緑の党の活躍や脱原発へいち早く舵を切ったことで名高い環境先進国・ドイツ。そのエコロジー的認識が高まったことのは戦後ではなくナチス体制期。アウトバーンと景観建設を切…

書評:宜野座菜央見『モダン・ライフと戦争 スクリーンのなかの女性たち』吉川弘文館、2013年。

- 日本映画は、「銃後」と呼ばれながらも中途半端なまま統制が緩やかに進行した一九三八、九年の社会にしたたかに対応した。何よりもスクリーンのモダン・ライフは、国民生活を戦前に変わらぬ豊かさのイメージによって描き、実際に戦争がもたらしたダメージ…

覚え書:「書評:アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること [著]ネイサン・イングランダー [評者]小野正嗣」、『朝日新聞』2013年06月02日(日)付。

- アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること [著]ネイサン・イングランダー [評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授) [掲載]2013年06月02日 [ジャンル]文芸 人文 ■生還者は「人間的」になったのか 艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉にす。だが…

書評:倉沢愛子『資源の戦争 −−「大東亜共栄圏」の人流・物流』岩波書店、2012年。

- 日本軍の東南アジア占領の最大の目的は燃料、食料、鉄鉱石など戦争継続に必要な「重要国防資源」の獲得にあったことは、本書のなかで再三強調してきた。獲得したものは、現地自活のほかに、「大東亜共栄圏」内の物流に回すこと、日本へ搬送することが重要…

書評:原田敬一『兵士はどこへ行った 軍用墓地と国民国家』有志舎、2013年。

原田敬一『兵士はどこへ行った 軍用墓地と国民国家』有志舎、読了。国民を創造する国家は「死」を記念・管理せざるを得ない。本書は緻密な実証と丹念なフィールドワーク、そして国際比較のを通して、戦死者の追悼・慰霊・顕彰・記念を検証、著者の広範な取材…

書評:井上寿一『政友会と民政党 戦前の二大政党制に何を学ぶか』中公新書、2012年。

- 歴史の教訓 以上の戦前政党政治の歴史から何を学ぶべきか、三点にまとめ直してみる。 第一に、二大政党制よりも連立政権の重要性である。戦前の日本政治は、二大政党制の限界を克服するために、新しい政党間提携を模索した。同様に今の日本政治も、二大政…

覚え書:「書評:鉄条網の歴史―自然・人間・戦争を変貌させた負の大発明 [著]石弘之、石紀美子 [評者]荒俣宏(作家)」、『朝日新聞』2013年04月14日(日)付。

- 鉄条網の歴史―自然・人間・戦争を変貌させた負の大発明 [著]石弘之、石紀美子 [評者]荒俣宏(作家) [掲載]2013年04月14日 [ジャンル]歴史 ■家畜用から新たな環境の囲いへ 鉄条網は西部劇を終わらせた。その発明者グリッデンが後妻に「花壇が家畜に荒らされ…

書評:山田邦男『フランクルとの〈対話〉 苦境を生きる哲学』春秋社、2013年。

山田邦男『フランクルとの〈対話〉 苦境を生きる哲学』春秋社、読了。NHK・Eテレ「こころの時代」の放送を元に、名著『夜と霧』で有名なヴィクトール・E・フランクルを読み直す最新の入門書。震災以降注目を浴びるフランクルは「今、何を語りえるのか」…

[文化評論][国民国家][日本思想史[政治思想史][カルチュアルスタディーズ][書籍・雑誌]覚え書:「書評:モダン・ライフと戦争―スクリーンのなかの女性たち [著]宜野座菜央見 [評者]水無田気流」、『朝日新聞』2013年04月07日(日)付。

- モダン・ライフと戦争―スクリーンのなかの女性たち [著]宜野座菜央見 [評者]水無田気流(詩人・社会学者) [掲載]2013年04月07日 [ジャンル]歴史 アート・ファッション・芸能 ■社会の矛盾とスターの身体 「女性の美」を読み解くことは、難しい。とりわけ政治…