哲学・倫理学(現代)

拙文:「読書:井上順孝編『21世紀の宗教研究』平凡社 刺激に富む先端科学との邂逅」、『聖教新聞』2014年11月22日(土)付。

- 読書 21世紀の宗教研究 井上順孝編 刺激に富む先端科学との邂逅 「科学的」という評価が合理的な価値あるものと見なされる現代。その対極に位置するのが宗教だ。宗教を迷信と捉えず、「宗教とは何か」を科学的に探究するのが宗教学の出発だったが、学の…

日記:「未来はよくなる」し「未来をよくしていこう」と思っていたけど……1995年という問題。

こないだ若い衆と呑んだとき話題になったのが、村上春樹さんが、“「孤絶」超え、理想主義へ」”(*1)を語ったこと。思い出すと、春樹さんではないけど、高校3年の時に、ベルリンの壁が崩壊したボクにも「未来はよくなる」というか「よくしていこう」と思…

覚え書:「Interview:村上春樹 『孤独』の時代に」、『毎日新聞』2014年11月04日(火)〜05日(水)付夕刊。

- Interview:村上春樹 「孤独」の時代に/上 僕の小説は「ロールゲーム」 毎日新聞 2014年11月04日 東京夕刊 作家の村上春樹さんに10月下旬、5年ぶりで話を聞く機会を得た。主な内容は3日朝刊で報じたが、今年出した短編集『女のいない男たち』…

覚え書:「発言:『私だけの古典』を見いだそう=紅野謙介・日本大学教授」、『毎日新聞』2014年10月30日(木)付。

- 発言:「私だけの古典」を見いだそう=紅野謙介・日本大学教授 毎日新聞 2014年10月30日 東京朝刊 二度三度とふれるたびに発見がある。それが私にとっての古典だと思う。世評に高い、いわゆる「古典」が必ずしもすべてのひとの古典になるわけではない。だか…

書評:石光勝『生誕101年 「カミュ」に学ぶ本当の正義』新潮社、2014年。

石光勝『生誕101年 「カミュ」に学ぶ本当の正義』新潮社、読了。カミュの探求を「正義」と捉え、その生涯と思索を、15本の「映画」で辿る異色のカミュ伝。仕掛けの多い構成ながら抜群に「読ませる」一冊だ。著者は若き日、カミュに傾倒したテレビマン。…

拙文:「読書:人は時代といかに向き合うか 三谷太一郎著(東京大学出版会)」、『聖教新聞』2014年10月25日(土)付。

- 読書 人は時代といかに向き合うか 三谷太一郎 著永遠なるものを射程に収める 政治史の大家が「時代と向き合い歴史を学ぼうとするすべての人々」に贈る歴史との対話−−近代日本の軌跡をたどる本論集は、さながら考えるヒントの玉手箱だ。 近代日本の歩みとは…

書評:河野哲也『「こども哲学」で対話力と思考力を育てる』河出ブックス、2014年。

河野哲也『「こども哲学」で対話力と思考力を育てる』河出ブックス、読了。最前線で活躍する著者が、その理論と実践の要を判りやすく書き下ろした、「こども哲学」入門。対話と討論を経ても、あらかじめ決まった意見に集約することが教育なのだろうか。相互…

書評:三枝博音『近代日本哲学史』書肆心水、2014年。

三枝博音『近代日本哲学史』書肆心水、読了。明治から戦前昭和に至る「哲学」移植とその受容を同時代の視点から描く。初版は昭和10年刊、ナウカ社より刊行。三枝は1892(明治25)年の生まれだから、「近代日本哲学史」を描くとは、まさに自身の学識の来し…

覚え書:修復的正義論の観点

- わたしは、民主主義を、じっさいには平等でも自由でもない諸個人が、それでも平等に扱われることを求めたさいに、一つひとつ制度を精査し、批判的に現状を捉え、改革していく政治システムだと考えている。その意味において、軍事的性奴隷制という人道に対…

日記:ポストコロニアル批評の嚆矢サイードが普遍的価値にこだわること

- 真実を語るという目標は、わたしたちの社会のように管理された大衆社会では、おもに、よりよい状況を構築すること、そして既知の事実に適用されておかしくない一連の道徳的原則−−平和、和解、苦悩の軽減−−といえるようなものを構想することである。 −−エド…

日記:Der bestirnte Himmel uber mir, und das moralische Gesetz in mir.

10月08日水曜日の皆既月食。手持ち撮影のコンデジでも割とうまく撮れました(ISO高いので粒子あらめ・涙さて……と、こういう天体の妙演や大自然の雄大さを間近にすると、Der bestirnte Himmel uber mir, und das moralische Gesetz in mir.……というカント…

覚え書:「耕論:スルーする力って? 『もっと自由になる』方策」、『朝日新聞』2014年10月07日(火)付。

- スルーする力って? 「もっと自由になる」方策 聞き手・尾沢智史 聞き手・藤生京子 聞き手・萩一晶 2014年10月7日 マキタスポーツ 70年生まれ。音楽だけでなく、映画・ドラマやお笑いなど多方面で活躍。著書に「一億総ツッコミ時代」(槙田雄司名義)、…

書評:仲正昌樹『精神論ぬきの保守主義』新潮選書、2014年。

仲正昌樹さんの『精神論ぬきの保守主義』新潮選書をちょうど読み終えた。保守とは字義の通り「古くからあるもの」を“守る”思想的系譜のことだが単純にあの頃は良かったと同義ではない。本書は近代西洋思想におけるの伝統を振り返りながら、現下の誤解的認識…

日記:自明こそ疑え

昨日の金曜日、後期2回目の「哲学」授業で、いよいよ本格的な導入の授業をすることができました。哲学を学ぶということは、「哲学をする」ことを学ぶ訳ですが、そこで大事になることは、あくまでも先ず「自分で考える」ということ。そして次に、その自分で…

覚え書:「物語、『他者に成る』力与えてくれる アンデルセン賞・上橋さん、式典で語る」、『朝日新聞』2014年09月12日(金)付。

- 物語、「他者に成る」力与えてくれる アンデルセン賞・上橋さん、式典で語る (写真キャプション)授賞式であいさつする作家の上橋菜穂子さん=メキシコ市 「児童文学のノーベル賞」と言われる国際アンデルセン賞の授賞式が10日、メキシコ市であり、同賞…

覚え書:「時代の風:大学教育の使命=京都大教授・山極寿一」、『毎日新聞』2014年09月07日(日)付。

- 時代の風:大学教育の使命=京都大教授・山極寿一 ◇世界へ学生送り出す窓−−山極寿一(やまぎわ・じゅいち) 第26代京都大学学長の候補に推挙された。10月からその任務に就くことになる。京都大学は自学自習をモットーにし、自由の学風と創造の精神を育…

日記:「ばかで何がわるい」よろしく、にたにたしながら臆面もなく権力の走狗と化す日本社会

1990年代バブルの拝金主義に対する反省や批判から出てきたのがいまのナチュラル志向でしょう。デコレーションから素朴へという流れのカウンターとして意義は否定すべくもない。確かにピカピカには目がくらむ。しかしながら、過剰に対する素朴というのは…

日記:ベストを求めるあまり、微温的なことを言う者を排除していけば、結局最悪の政治指導者を招き寄せるという結果につながる

- 政策転換の経験と今後の財産 市民に求められるのは、程度の違いを見極める能力と、政策変化についてある程度の満足を感じる「ゆるさ」である。地上で理想を実現することが不可能であることは、すでに繰り返し述べてきたとおりである。理想を追求するあまり…

覚え書:「発言:解釈改憲許さぬ『国民意思』を=山中光茂・三重県松阪市長」、『毎日新聞』2014年08月14日(木)付。

- 発言 解釈改憲許さぬ「国民意思」を 山中光茂 三重県松阪市長 安倍内閣は7月1日、集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈の変更を閣議決定した。日本国憲法が「国際紛争を解決する手段」としての戦争と武力の行使を放棄したことに対する明白な違反である…

日記:追悼、木田元先生。

- 哲学者の木田元さん死去 ハイデガー研究の第一人者 2014年8月17日16時26分 『朝日新聞』電子版。 http://www.asahi.com/articles/ASG8K4S5TG8KUCLV002.html 木田元さん 20世紀ドイツの哲学者ハイデガーの研究で知られる哲学者で中央大名誉教授の木田元(…

書評:トリン・T・ミンハ(小林富久子訳)『ここのなかの何処かへ 移住・難民・境界的出来事』平凡社、2014年。

トリン・T・ミンハ『ここのなかの何処かへ 移住・難民・境界的出来事』平凡社、読了。ポストコロニアリズムとフェミニズムの代表的映像作家・思想家の手による20年ぶりの評論集。グローバリズムの歓声はその理念と裏腹に領域を分断しつつあるのがその実情…

拙文:「読書 社会はなぜ左と右にわかれるのか ジョナサン・ハイト著」、『聖教新聞』2014年07月26日(土)付。

- 読書 社会はなぜ左と右にわかれるのか ジョナサン・ハイト著 高橋洋訳まず直観に基づく道徳的判断 道徳的判断を下す際、それは直観ではなく理性によって導かれると、普段、私たちは考えるが、実際には逆らしい。 本書は膨大な心理実験から「まず直観、それ…

日記:しっかりとものを考えた思想家の本をはじめから終わりまで読み通し、その文体に慣れ、その思考を追思考すること

- 思考の訓練 普通の人間にとってものを考えるということは、そう容易なことではない。目をつむって、さて何かを考えようと思っても浮かぶのは妄想のたぐいであろう。ものを考えるには特殊な訓練が必要である。その訓練として私に考えられるのは、しっかりと…

書評:「読書 人間にとって善とは何か=フィリッパ・フット著 筑摩書房」、『聖教新聞』2014年06月28日(土)付。

- 読書 人間にとって善とは何か フィリッパ・フット著 高橋久一郎 監訳 河田健太郎・立花幸司・壁谷彰慶訳全人性の理解促す思索が光る 学問のあり方が見直された20世紀、最も批判を受けたのは哲学だ。諸学の王の特権性は反省されるべきだが、根源的な探究態…

書評:田辺元(藤田正勝編)『田辺元哲学選I 種の論理』岩波文庫、2014年。

田辺元(藤田正勝編)『田辺元哲学選I 種の論理』岩波文庫、読了。本選集は社会的実存の論理を提示する田辺の「社会存在の論理 哲学的社会学試論」、「種の論理と世界図式 絶対媒介の哲学への途」、「種の論理の意味を明にす」の三論文を収録。絶対的なもの…

書評:小坂国継編『大西祝選集III 倫理学篇』岩波文庫、2014年。

小坂国継編『大西祝選集III 倫理学篇』岩波書店、読了。理想主義的進化説を正面から取り上げた東京専門学校講義録『倫理学』および3つの倫理学講演(1,古代ギリシア道徳哲学とキリスト教道徳の対比、2,ギリシア人の道徳観からキリスト教への道徳観への…

書評:徳永恂『現代思想の断層 「神なき時代」の模索』岩波新書、2009年。

徳永恂『現代思想の断層 「神なき時代」の模索』岩波新書、読了。「断層は時に地殻を揺るがして、不動と見えた既成秩序を崩壊させ、新しい地層の断面を露出させる。そして差異のうちに共通性を、共通性の内に差異を見出す」。本書は20世紀思想を貫く断層を…

拙文:「書評 ハンナ・アーレント 矢野久美子・著」、『聖教新聞』2014年05月24日(土)付。

- 書評 ハンナ・アーレント 矢野久美子著自分で「考える」契機生む 20世紀を最も真摯(しんし)にかつ激しく生き抜いた女性哲学者の代表こそハンナ・アーレントであろう。 ユダヤ人ゆえにドイツから亡命し、人間を「無効化」する全体主義と対決した。『全…

書評:杉浦敏子『ハンナ・アーレント入門』藤原書店、2002年。

杉浦敏子『ハンナ・アーレント入門』藤原書店、読了。公共性の復権、政治的なるものの再興、複数性(多様性)の擁護、労働の再考をキーワードに、アーレントの思想を現代に蘇らせる入門。思索を辿るだけでなく、彼女の思索が現代の課題にどのように応答する…

覚え書:「『ハンナ・アーレント』 矢野久美子著 宇野重規(政治学者・東京大教授)・評」、『読売新聞』2014年05月04日(日)付。

- ・宇野重規(政治学者・東京大教授) 『ハンナ・アーレント』 矢野久美子著誠実な政治哲学者の生涯 ハンナ・アーレントというと、全体主義やら革命を論じた、ちょっと怖そうな政治哲学者というイメージがあるかもしれない。ところが、日本でも話題になった…